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院長 田中康文

鼻と副鼻腔の構造と機能


鼻は、嗅覚器官であるとともに、肺に出入りする空気の主な通り道にもなっています。肺に向かう空気を温め、加湿し、きれいにします。鼻の周囲の顔面の骨には副鼻腔と呼ばれる空洞があります。

副鼻腔には、頬の裏側にある上顎洞(じょうがくどう)、目の間にある篩骨洞(しこつどう)、 額の裏側にある前頭洞(ぜんとうどう)、鼻の奥にある蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4種類があります。

このような副鼻腔は粘膜が鼻汁(鼻水)を作るほか、顔面の骨と頭蓋骨の重量を減らしつつ、骨の強度と形を維持させ、顔面への衝撃を吸収しています。また、鼻と副鼻腔の空洞部分は、声に響きを加えています。

鼻の上部は骨により、下部は軟骨により支えられています。鼻の内側の空間を鼻腔といい、鼻中隔によって左右2つの通り道に分かれています。鼻中隔は骨と軟骨からなり、鼻孔(あな)から鼻の奥まで伸びています。左右の鼻腔のそれぞれには、 側壁から通常、3つの骨が張り出しており、 上から上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介とよび、一連のひだを作り出しています。このひだで鼻腔の表面積が大きく増え、それによって熱や湿気の交換がより効果的にできます。

ひだの間にポリープが生じることがあり、特に喘息の人、アレルギーのある人、嚢胞性線維症の人、 アスピリンを長期間使用している人でよくみられます。

鼻腔の内側は、血管が密集した粘膜に覆われています。表面積が広く、血管がたくさんあるおかげで、鼻は外から入ってくる空気を素早く温め、加湿することができます。

粘膜の細胞は粘液を分泌し、粘膜の表面には細い毛のような小突起(線毛)があります。粘液が鼻の中に入ってきたほこりの粒子をとらえ、線毛がそれを鼻孔の前方またはのどに向かって運び、気道から取り除きます。この働きは、肺に入る空気をあらかじめきれいにするのに役立ちます。せきが肺をきれいにするように、くしゃみは刺激に反応して鼻の通り道を自動的にきれいにします。

鼻の最も重要な働きの1つは、嗅覚の役割です。鼻甲介と側壁の間の空気の通り道を上から順に上鼻道、 中鼻道、 下鼻道とよびますが、鼻から空気を吸うと、鼻孔から入った空気は、おもに中、下鼻道を通って気管にゆきますが、少量の空気は上鼻道を通過します。つまり鼻腔の上部にある嗅裂という狭い部分に流れこみます。ここに嗅細胞があり、においを感じとっています。それらは線毛を備えた特殊な神経細胞です。各細胞の線毛は、様々な化学物質に反応し、刺激を受けると神経インパルスを生じ、そのインパルスは鼻のすぐ上の頭蓋内にある嗅球の神経細胞へと送られます。神経インパルスは嗅球から嗅神経によって脳に直接伝えられ、匂いとして認識されます。

嗅覚は、味覚に比べて、その仕組みははるかに高度なものです。人間が識別できる匂いの数は、味よりもはるかにたくさんあります。食べているときの主観的な味覚(風味)には、味と匂が関わっています。かぜをひいたときのように、嗅覚が鈍っていると食べものの味があまりしないように感じるのは、そのためです。嗅細胞は鼻腔内の上の方にあるため、普通の呼吸ではそこには空気があまり届きません。しかし、匂いをかごうとして鼻から空気を吸い込むと、嗅細胞に届く空気の量が増え、細胞に触れる匂い物質の量が大きく増加します。

鼻腔と同様に、副鼻腔も線毛をもち、粘液を分泌する細胞でできた粘膜で覆われています。ほこりの粒子や微生物が副鼻腔に入ると粘液にとらえられ、線毛の働きで、小さな開口部を通って鼻腔へ運ばれます。これらの開口部は非常に狭いため、かぜやアレルギーなどで粘膜が腫れると、容易に排出が妨げられます。副鼻腔からの正常な排出が妨げられると、副鼻腔の炎症や感染が生じます(副鼻腔炎)。これらの副鼻腔は細い孔(あな)で鼻腔に通じており、 鼻呼吸をすることで空気の交換が行われています。


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