• 院長 田中康文

慢性蕁麻疹


蕁麻疹とは、突然激しいかゆみをともない、米粒大から地図状に赤く膨隆し、30分から1時間程度、長くて1日であとを残さず消退する、比較的よくみられる皮膚疾患です。

突然に起こったり出没したり変化が多い病変は、自然界の風がひきおこす現象に似ているところから、中医学では風疹と呼ばれ、身体内部の陰陽失調による内風、あるいは外来性の外風(たとえば花粉・化学的刺激物質・温度差など)に誘発されて起こるとされています。

体に合わないものを食べたとき、薬が合わなかったときなど原因がはっきり分かることもありますが、原因の大半は分からないといわれています。西洋医学では、原因の如何にかかわらず抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などを用いてかゆみや症状を抑え込もうとします。以前ならこれらの薬を2、3回も飲めばすぐに治る人が多かったものですが、最近では、症状を繰り返したり、慢性化したりするケースが増えているようです。6週間以上にわたり再発を繰り返すものは慢性蕁麻疹といい、数年~10年以上治癒しないものもあります。

蕁麻疹の発症する可能性として以下のものがあげられています。

①食べ物による原因

えび・蟹などの甲殻類、青魚などの魚介類、牛乳・チーズなどの乳製品、穀類、卵、食品添加物、豚肉などの肉類。小麦、ソバ、乳製品、卵、落花生は、五大アレルギー成分といわれています。

乳製品や肉・魚・卵などに含まれる動物性のタンパク質や、油などはすぐにカラダの外に排出されにくいものなので、普段食べているときはなんともなくても、その日の体調が優れなかったり、疲れていたりするとアレルギーとして反応することもあります。

②精神的な原因

人のカラダは本来、カラダに毒素が溜まったとき発汗や排泄でカラダの外に出そうとする機能が備わっているのですが、その機能がうまく働かない時に皮膚疾患として症状があらわれやすくなります。ストレスもカラダの毒素のひとつと捉えられます。現代のストレスの多い社会に起こりやすい症状の一つかもしれません。

③その他の要因

犬猫などの動物・金属などの接触・薬の副作用・寒暖差・太陽光や汗などでも起こる場合があります。慢性蕁麻疹では、原因となる物質が特定できればそれを摂取・接触しないようにし、抗アレルギー剤やステロイド剤の内服を行います。また物理的刺激が原因となっている場合は、その環境を避けます。

慢性蕁麻疹の約70%は原因不明で治りにくく、抗アレルギー剤などの使用により軽快しても完治しないことも少なくないといわれています。ところが中医学からの観点では比較的よく改善し、完治も可能な疾患のように思われます。

中医学では、蕁麻疹は外風あるいは内風が引き金となり、栄衛不和(えいえふわ)という一種の気血不和によって生ずるとされています。脈中を流れる血は中医学では営血と呼ばれ、営血と並走して血脈の外に脈外の気が流れているとされています。脈外の気は衛気(えき)の一種とされ、衛気は皮と肌・腠理(そうり、汗管に相当)を温めながら、また外邪が入ってくればそれに対して防衛しながら走っているとされています。

太い血脈・細い血脈はともに営血と脈外の気は併走していますが、太い血脈は血の運搬が主であり、

細い血脈は血の作用である滋潤・営養を行っています。このような営血と脈外の気は互いに制御・調和しながら、人体のあらゆる組織に網の目のように張りめぐらされています。

営血は、血が脈外に漏れないように自ずから守り、また脈外の気が走りすぎたりしないよう、一方、脈外の気は営血が脈外に漏れないよう固めているとされています。このような細い血脈の営血と脈外の気が並走できなくなった状態は営衛不和と呼ばれています。

営血が少なくなったり(血虚、陰虚)、流れが悪くなったり(血瘀)、熱を持って流れが早くなったり(血熱、陰虚内熱)など、営血に異常がみられたり、あるいは脈外の気が少なかったり、多すぎたりすると栄衛不和を生じ、営血から津液(水分)が漏出するといわれています。これが蕁麻疹が膨隆する主な原因とされています。

蕁麻疹の発現にはこのような栄衛不和のほかに、胃気の関与が大変重要といわれています。胃は食物を分解、吸収し、気の最大の産生場所として、大変重要な臓腑です。胃気が産生され、全身に充分に供給されて初めて、ほかの臓器や器官が働き、身体は生きた状態にあるといえます。

飢餓状態のときにエネルギーの源として利用されるのは、腹腔内の脂肪組織であり、皮下の肌に蓄えられた皮下脂肪です。つまり皮下脂肪は肌に蓄えられた胃気ということができます。このように胃気と肌は密接な関係があります。

 胃気は全身に供給されているのですが、供給量は状況に応じて変化します。例えば安静時には少なく出て、運動時には多く出たりと胃気の供給は調節されています。胃には、胃気を出す方向と、胃気を出さなくする方向という2つの拮抗的な機能が存在しています。この胃気が過剰に出すぎないように抑制する機能は守胃機能と呼ばれています。守胃機能が失調すると、胃気がどんどん失われたり、特定の方向に過剰に出過ぎるといった病理を期します。

ストレスや陰虚内熱により胃熱が生じたり、あるいは生来胃が弱かったり、暴飲暴食により胃が弱っているなど、守胃機能が損なわれている傾向にあるところに局在する風邪が引き金となって、胃気が突然外肌に流れ、その部分が肌熱となります。これが蕁麻疹が発赤する主な由来です。

肌熱が亢進すると細い血脈も熱をもち、拡張し、その結果、営血から津液(しんえき)が漏れ、さらに胃気が肌に外出すると脈外の気も増え、栄衛不和が生じ、営血からさらに津液が漏れます。このような肌熱と栄衛不和のほかに、風邪は腠理の中に入り込む傾向にあり、その結果、腠理は風邪によって閉塞されているため、肌気とともに亢進した肌津が汗として外出できず、膨隆します。

このように蕁麻疹はさまざまな原因によって生じ、各人の体質をよく見極めて治療しないと完治は難しいと思われます。中医学では、栄衛不和を治療しながら、胃が弱っている状態では胃を丈夫にするとともに気血を補い、ストレスや陰虚内熱があれば改善を図り、熱が著明であれば清熱するなど、これらを総合的に行えば蕁麻疹は完治すると思われます。

慢性蕁麻疹の治療は主に煎じ薬で行うことが多いのですが、煎じ薬が飲めない人はエキス剤で対応しますが対症的な治療で終始することも少なくありません。

十味敗毒湯、茵陳五苓散を中心に、効果が薄ければ防風通聖散、黄連解毒湯を加えたり、痒みが強ければ消風散、ストレスが多ければ加味逍遥散や柴胡桂枝湯などを考えます。

蕁麻疹の出にくいカラダづくりをしていくことが予防につながります。

①ストレスや疲れをためこまない

ストレスという「毒」をずっとためこみ続けていれば、いつかは必ず、溢れ出てくるのです。ストレスを発散する、受け止める、受け流すなど自分なりのストレス解消法をうまく活用しましょう。

②食事の改善

蕁麻疹の原因となりうる動物性のタンパク質や油を避けるのはもちろん、チョコレートや辛いもの、アルコールなどの刺激物も蕁麻疹を助長してしまう可能性があります。症状が出ている時は摂取を控えたほうが良いでしょう。

③睡眠・生活習慣の改善

不規則な生活や睡眠不足が与えるカラダへのダメージは、自分が思っている以上に大きいもの。疲れをうまく解消できておらず、気づかないうちに慢性疲労になっていることもあります。また、睡眠は自律神経や免疫力にも多くの影響を与えていると考えられています。良質な睡眠をとることも大切です。

蕁麻疹が出たときには「何をしていた時に発症したのか」「どのような状況だったのか」を自分でよく考えてみましょう。


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