• 院長 田中康文

足底腱膜症


足底腱膜症(足底筋膜炎)

足底腱膜症は足底腱膜炎とも呼ばれます。足底腱膜に炎症がある場合もありますが、その多くは足底腱膜に繰り返し負荷がかかり微小断裂によって起こるので、足底筋膜症と呼ぶのが正しいと思われます。

足の甲の骨は、弓状(アーチ)になって体重を支えていますが、アーチを弓の弦のようにピンと張って支えているのが、足の裏にある足底筋膜です。この足底筋膜は、かかとの骨から足指の付け根まで膜のように薄く幅広い腱が張っていますが、その延長上でアキレス腱までつながり足首の可動にも影響します。

歩いたり走ったりする際に、足底腱膜は、スプリングのように荷重時にショックを吸収したり、あるいはばねを与える役目がありますが、ランニングやジャンプ動作などで体重刺激が足部にかかる場合、足底腱膜は繰り返しの牽引刺激によって腱が変性、微小断裂や炎症が発生しやすくなります。

ランニングやジャンプなどの動作のほかに、長時間の立ち仕事をする人や営業などで硬い靴でよく歩く人など過使用による緊張以外には、かかとの高い靴を履く人、足のアーチが異常に高いもしくは低い(扁平足)人、ふくらはぎの筋肉や、アキレス腱(ふくらはぎの筋肉をかかとの骨に付着させる腱)が硬い人、さらに老化によるアーチの低下なども原因となります。

男性なら40歳以降、女性なら50歳以降で足底筋膜の筋力が低下している人は、足底筋膜症になりやすい傾向があります。男性だと実は足底筋膜症は足の痛みの原因で1、2位を争うくらい多い悩みな

のです。

痛みを感じる部位は人によって異なり、足底腱膜に沿ったどの部位にも痛みが起こりえますが、痛みが最もよくみられるのは足底腱膜がかかとの骨の下側に付着する部分で、かかとの骨の前方内側を押すととても痛がります。続いて中央部(土踏まず)、遠位部の足指の付け根あたり(中足骨頭部近傍)の3ヵ所が好発部位です。

足底筋膜症は通常は片方の足で起こります。特に痛みを感じるのが朝一です。朝一の第一歩でズキンっとくるのが典型的なパターンです。かかとの下側に痛みを感じ、朝起きた後や長時間の安静の後、最初に体重をかけたときにしばしば激しい痛みを感じます。普段座っていることの多い人は、通常、突然活動レベルを上げたり、サンダルなど支えの少ない靴を履いたりしたときにも発症します。

痛みは、5~10分以内に一時的に解消しますが、その日のうちにまた痛くなることがあります。

かかとを蹴り出すとき(歩いたり走ったりするときなど)や長時間の安静の後に、痛みが強くなることがよくあります。その場合、痛みがかかとの下側からつま先に向かって広がります。歩いているときに、足の裏の内側の縁に沿って、焼けるような痛みや刺すような痛みを感じることもあります。

症状が出てくるのはいつの間にかというケースが多いですが、調べると慢性アキレス腱炎やふくらはぎが硬いなど、足首がうまく動かせない人がなりやすいのも特徴です。

足底腱膜が、かかとの骨を過度に引っ張ると、骨棘(コツキョク)ができることがあります。このようなかかとの骨棘は、かかとの骨(踵骨[しょうこつ])から余分なとがった骨が増殖したものです。通常は骨棘ができると痛みを伴いますが、足が順応するにつれて痛みが軽減することがあります。踵骨棘は、必ずしも症状を引き起こすわけではありません。症状が生じる場合は、ほとんどは手術をしなくても治療できます。

足底筋膜症と診断される人でも、長母指屈筋炎の可能性があります。つま先立ちした時に強く痛むのであれば、長母指屈筋にしこりを抱えていると思ってよいでしょう。この筋肉はくるぶしの内側を通って足底に入り親指に付着しますが、起始部は膝の外側の少し下あたりです。ですので、ひざ下の外側の筋肉にしこりを探してみてください。

この他にも、坐骨神経痛の症状や踵骨骨端炎、踵骨骨髄炎、単発性骨嚢腫(こつのうしゅ)といった原因でかかとが痛いと感じるケースがあります。しかし、何もしていないのに、かかとが痛い方、例えば朝起きて急にかかとが痛いのに気が付き、その後何ヶ月も痛みに悩まされるなど、実はこういう何故かわからないが、いきなりかかとが痛み出したという方が一番多いのです。

予防として、必要以上に足底筋膜に負担をかけないように、クッション性が高い靴底で、かかとがしっかりしていて、足にフィットする靴を選びます。治療として、ストレッチ運動や、氷をあてること、靴を変えること、靴の中に器具を装着すること(かかとを、サポートし、位置を高くし、衝撃を和らげます。かかとを保護するようにシリコン・ヒールパッド、踵骨棘保護クッション付きなどの装着も検討します。

急性期は局所の炎症を抑えることが先決です。なんといっても第1選択は、局所の休息(ランニング、ジャンプ練習の休止)です。西洋医学的には消炎鎮痛内服薬を用います。従来行われてきたステロイド注射は、頻回に行うことは避けるべきです。ステロイドの注射が多すぎると、腱膜やかかとの下の脂肪体を損傷し、足底腱膜症が悪化する一因になることがあります。足底部へ直接的、あるいは間接的(下腿などへ)に低周波、干渉波、低出力レーザーなどの物理療法を行い、痛みを和らげます。最近ではヒアルロン酸注射や体外衝撃波は有効であるという報告も散見されます。

しかし、これらの治療法に反応せず、疼痛が持続し治療に難渋する症例もあり、このような場合、漢方薬はしばしば有効であり、是非試みて頂きたいと思います。

足底筋膜症の原因は多岐に渡り、①肝腎両虚,②気血両虚,③寒湿,④風湿、⑤風湿熱に分類され、それぞれの症状に応じて漢方藥を使い分ける必要があります。

たとえば、

①足腰が軟弱で、冷えを伴っている場合は牛車腎気丸

②体力がなく、疲れやすい場合は十全大補湯

③冷えを伴っている場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯(+附子末)あるいは苓姜朮甘湯、五積散

④冷えは顕著ではなく、罹病期間が数ヶ月以上の長期間にわたっている場合は麻杏ヨク甘湯+ヨクイニン錠

⑤罹病期間が1、2ヶ月と比較的短い、あるいは罹病期間が長くても歩くたびに足底に激痛が走る場合は、越婢加朮湯あるいはヨクイニン湯

などを用います。

足底筋膜症は外傷による足底筋膜の小断裂によって起こっており、そのため、罹病期間が比較的短い、あるいは歩く度に足底に激痛が走る場合は、炎症とむくみを伴っていることが予想され、足底部に明らかな熱感がなくても越婢加朮湯あるいはヨクイニン湯、罹病期間が長期にわたっている場合は足底部には明らかなむくみがなくても断裂に伴うむくみがまだ残存している可能性があるため、上記の漢方薬で十分な効果が得られなかった場合は五苓散やヨクイニン錠、あるいは防已黄耆湯を追加、罹病期間が数年にわたっている場合は血流も悪くなっていることが予想され、上記の漢方薬に桂枝茯苓丸などを追加する必要があります。

また、麻杏ヨク甘湯あるいは牛車腎気丸だけでは十分な効果が得られなかった場合は、これらを合わせた治療(合方)を試みた方がよいと思われます。


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