住所
栃木県下野市
文教1-2-28
  • 院長 田中康文

髪の諸症状


【薄毛、抜け毛、脱毛】

漢方では抜け毛・脱毛を治療する特効薬はありませんが、漢方薬による体質の改善が髪の毛に良い影響を与えるのは事実です。体質を改善することで抜け毛・脱毛を防ぐので、原因になっている体質を改善する漢方薬を抜け毛の予防に用います。

髪の毛の寿命は、男性は3年から5年。女性は4年から6年と言われていますので、髪の毛の漢方治療は數年かけて気長に行う必要があります。

自然脱毛→しばらくしてから毛母細胞の再分裂→新しい髪の毛の芽生え→成長前期のステージ→成長期に戻り、伸長

このような毛周期を毛髮の1本1本が独自に持っています。

ところが髪の毛を作るもとになる毛細胞に何らかの原因で障害が発生すると、成長した髪の毛は急速に脱毛します。このようなヘアサイクルの異常を脱毛症と呼びます。

髪の毛は全身の栄養状態と体の若さ、老化のバロメーターです。漢方では、「髪は血の余り」「髪は腎の華」といわれ、髪のトラブルは「血」とホルモンなど生殖や老化と関係のある五臓の「腎」に問題があると考えます。

①血虚

血虚とは、血液が不足した状態です。

髪の毛は血の余りと考えられているので、血液が不足すると髪の毛の成長に必要な栄養が届けられなくなるので抜け毛が増えます。抜け毛のほかに、白髪、髪が細く弱い、髪が乾燥して艶がないなども見られます。産後、特に授乳中の女性に抜け毛が起こりやすいのも、血が不足しやすいためです。(母乳は血液ですので、授乳中は血不足に陥りやすくなります)

胃腸が弱いヒトは鉄剤や鉄のサプリメントを飲んでも吸収されにくく効果が出にくいこともあるので、消化吸収されやすいヘム鉄を多く含む棗(なつめ)を食べるとよいと言われています。このような抜け毛は、血を補う四物湯、当帰芍薬散、人参養栄湯、十全大補湯などを用います。

②腎虚

もうひとつ、抜け毛との関係が深いのが腎虚です。漢方の腎は発育、成長、生殖などに関わる生命力のもとと考えられています。腎の華は髪の毛にあると言われ、髪の毛の艶やかな色、弾力などは腎臓のちから、腎精を補うことで保たれます。腎が丈夫で腎精がたっぷりあれば、腎気も強く髪の毛は美しく若さを保てます。しかし、加齢によって腎の精は衰えると、髪の元気さが失われ、頭頂部が薄くなったり、抜け毛や白髪が多くなります。また、若くてもストレスや睡眠不足など生活習慣が乱れると、腎の力が弱くなり抜け毛の原因になることもあります。

漢方では、腎虚による抜け毛に二至丹(中国では、抜け毛などの髪のトラブルに昔からよく使われる女貞子と旱蓮草を用いた処方)や海馬補腎丸、八味地黄丸などが用いられます。このように抜け毛や脱毛の原因として、血虚や腎虚のことが多いのですが、そのほかにストレスや湿熱が関係していることもあります。

③肝気鬱結(かんきうっけつ)

肝気鬱結とは精神的なストレスによる症状のことです。身体全体の巡りを調節する肝がストレスにより気と血の巡りが悪くなります。髪の毛に血の栄養を届けられなくなると抜け毛が増えます。抜け毛が増えるとさらにストレスが大きくなるので悪循環に陥りいります。こういった状態に対しては、ストレス緩和などの効能を持つ漢方薬での対策が必要になります。

肝気鬱結による抜け毛には加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、加味帰脾湯などを用います。さらに、頭皮や髪へ十分に栄養を届けるためには血の流れがスムーズであることが大切です。桂枝茯苓丸や通導散、キュウ帰調血飲などの血の巡りを整える漢方薬などを使い、良質な血が毛根まで届くようにします。

④湿熱

湿熱とは、体内に不要な水と熱がたまって気や血の巡りが悪くなった状態です。食べ過ぎや飲み過ぎで余分なものが体の中にたまっていることが主な原因で、男性に多いといわれています。湿熱の状態が続くと頭頂部に熱がこもり毛穴がふさがってしまいます。これにより抜け毛が増えると考えらえています。

抜け毛のほかに、頭部に油が多く、痒みなども見られることもあります。湿熱による抜け毛には竜胆瀉肝湯に二至丹などの漢方薬を用います。

【円形脱毛症】

1~数個のほぼ円形の脱毛斑が、ある日突然頭部に出現します。青年、特に女性に多くみられ、自覚症状がなく美容院や友人、家族など他人に指摘されることもあります。後頭部や側頭部の生え際に沿って境界鮮明な脱毛斑を形成する蛇行状脱毛症や、円形脱毛症が進行していくと全頭脱毛症から全身の脱毛になる汎発性脱毛症に至ることもあります。病因は不明ですが、自己免疫説やストレス説などが言われています。ストレスが原因の円形脱毛症は、緊張状態が長く続いたりストレスにより自律神経が乱れ、抹消血行の流れが悪くなり頭皮に十分な栄養を運べなくなり脱毛してしまいます。

6ヶ月または1年以内に自然に治ることが多いようですが再発しやすいと言われています。

中国医学(中医学)では、円形脱毛症の原因として以下のものが挙げられています。

①血熱生風、風熱血燥

怒りなどにより生じた熱が血に移り、突然脱毛したり、別の所にも脱毛が生じたりします。自然界の風は突然起こり、移動します。そのような突然起こったり、移動する現象が風に似ていることから、急に脱毛したとか急に白髪になった、などという時は、中医学では身体内部に風、すなわち内風が生じたと考えます。また、風で水が乾いたり、落葉するように、体の中の風は髪の乾燥や脱毛の原因になります。

血が少ないと、身体の中から風が起こり、症状が長引きます。突然の脱毛あるいは白髪、頭皮はやや痒く乾燥する、頭皮の痒みは強い時もある、髪の毛は光沢がなく乾燥、折れやすい。進行が早く、よく若者にみられます。しばしばイライラや不眠を伴います。

治療として、熱を冷まし、血を補いながら風を鎮め、肝と腎に潤いを与えます。 生薬としては、生地黄、牡丹皮、赤芍、センキュウ、羌活、天麻、木瓜、菟絲子、白朮、酸棗仁、珍珠母、何首烏、女貞子、旱蓮草などが用いられます。エキス剤としては、荊芥連翹湯、当帰飲子、消風散、二至丹、四物湯などが用いられます。

②肝腎不足・肝腎両虚

ふだんから髪の毛がカサカサして光沢がなく、白髪が多い。円形脱毛が多発し、また、融合して大きい面積となり、繰り返し再発しやすいです。中医学では、「肝は血を蔵し、腎は精を蔵する」と言われ、肝腎不足では肝血虚により血の栄養が不足し、腎精が不足します。

治療としては、肝と腎を補い、血と腎精を潤します。生薬としては、何首烏、茯苓、当帰、枸杞子、菟絲子、牛膝、補骨脂(七宝美髪丹)+女貞子、旱蓮草が用いられます。エキス剤としては海馬補腎丸、杞菊地黄丸、二至丹などが使われます。

③肝鬱血・瘀血阻絡

脱毛や白髪を気にしてストレスが強い、憂鬱になることでおこります。ほかの原因で脱毛や白髪があっても、そのこと自体がストレスになり、更に悪化することもあります。ストレスが強いとき、精神的な症状以外に血の流れも滞ります。円形脱毛はなかなか再生できず、顔色が艶がなくなります。

治療として、気と血を巡らし、血を潤します。加味逍遥散+桂枝茯苓丸あるいは通導散、キュウ帰調血飲に加えて、四物湯、二至丹などが用いられます。

【壮年脱毛症】

男性の青壮年に多くみられ、いわゆる若ハゲです。男性ホルモンが毛母細胞の分裂、増殖を抑えて軟毛になって、さらに髪の毛は脱毛して頭前額部の生え際があがり、しだいに生え際の線が後退することが多いですが、頭頂部から著明に薄くなってくることもあります。

進行すると、後頭部~側頭部を除いて脱毛します。

壮年脱毛は男性ホルモンの関係もありますが、ストレス対策、ストレス解消法や精神的なリラックスなども大切です。中医学では、その原因として以下のものが挙げられています。

①血熱風燥

髪の毛は光沢がなく乾燥、折れやすい。だんだん薄くて脱毛、落屑(フケ)を伴う。

治療として、熱を冷まし、風を鎮め、潤します。生薬として、生地黄、菊花、牡丹皮、赤芍、山梔子、苦参、蝉退、シツリシ、白鮮皮、甘草(涼血散風湯)などが用いられます。

②風熱

頭部皮膚は脂っぽい感じがあり、髪の毛は油性を呈し、油性の落屑、頭部に虫が這っているような掻痒感が認められることがあります。エキス剤として、竜胆瀉肝湯が用いられます。

③血虚風燥

髪の毛は光沢がなく乾燥、細く柔らかい、折れやすく、皮膚は乾燥傾向にあります。

治療として、風を鎮め、血と皮膚を潤し、痒みを鎮めます。生薬として、センキュウ、羌活、木瓜、天麻、当帰、白芍、菟絲子、熟地黄、補骨脂、女貞子、旱蓮草、紅花などを用います。

《食材》

黒い食べ物(黒ごま、黒きくらげなど)は腎の働きを助けてくれる食材です。

赤い食べ物(レバー、トマトなど)は血を補ってくれる食材です。

ほかに薦められる食材は豚肉、黒米、黒豆、プルーン、人参、なつめ、牡蠣、ほうれん草なども。

髪の毛に良い食事では黒ゴマ(タンパク質、ビタミンE、カルシウム、鉄、リンなどが豊富に含まれている)、コンブ(ヨード、ネバネバのコンドロイチン)、鶏ガラのスープなども薦められます。

髪の成分はケラチンという硫黄分を含んだタンパク質です。ケラチンは美しい髪の毛に必要なタンパク質です。またカルシウムも髪の毛の艶に大切な役目をしています。ヨードや亜鉛、セレニウムのミネラル類も髪の毛の発育に大切です。また髪の毛の美しい黒さの秘訣はメラニン色素です。

メラニン色素の合成にもヨードや亜鉛、セレニウムなどのミネラルが関与しています。

普段から偏らない食事で栄養を摂ることと、血流を良くするためにもリノール酸やビタミンEも大切です。


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