わき腹から側胸部にかけての痛みです。
突然、右のわき腹が痛くなり、冷や汗が出たり、あるいは発熱がみられた場合は、肝炎、胆石、胆嚢炎、さらに胆嚢癌などが疑われますので、これらの症状が見られた場合は病院を受診して下さい。
漢方では、慢性に経過し、反復してわき腹が痛い場合に対象とすることが多いようです。
最もよく見られる症状は、「肝鬱気滞」という状態です。
肝鬱気滞(かんうつきたい)
ストレスや緊張などによって、肝気という肝の気の流れが悪くなり、脇痛が生じる病気です。
胸脇部が脹って、鈍い、重苦しい痛みが生じ、特に痛みの部位が変わったり、ストレスや緊張で痛みの程度が変化するという特徴があり、そのほかにいらいら、怒りっぽい、ゆううつ、ため息、腹痛などを伴います。
精神的な緊張を緩め、気分をのびやかにして、肝気の流れをよくすることで痛みを和らげるようにします。
主な生薬としては、柴胡、香附子、芍薬などを用います。
エキス剤としては四逆散、加味逍遥散、抑肝散加陳皮半夏、小柴胡湯、柴胡桂枝湯などが用いられます。
肝陰不足(かんいんぶそく)
慢性疾患や過労などにより、肝の陰血を消耗して、陰血が血脈を満たすことができないために、血行が悪くなり痛みが生じる状態です。疲れたり、動くと胸脇部の痛みが強くなり、そのほかに目のかすみやキーンとした耳鳴り、四肢のしびれなどを伴います。
肝の陰血を滋養して潤し、痛みを和らげます。
主な生薬としては、地黄、枸杞子、当帰、芍薬、麦門冬、川楝子などを用います。
エキス剤としては、滋陰至宝湯、抑肝散加陳皮半夏、加味帰脾湯、補中益気湯、炙甘草湯などが用いられます。
血瘀(けつお)
肝鬱気滞や陰血不足に伴い、血流が悪くなった状態です。一定部位に刺すような痛みがあり、夜間に痛みが強くなります。血行の流れをよくして痛みを和らげます。
主な生薬としては、当帰、川キュウ、芍薬、莪朮、桃仁、紅花、蘇木などを用います。
エキス剤としては、桂枝茯苓丸、キュウ帰調血飲、通導散などが用いられます。