• 院長 田中康文

「L/H比」を目安にコレステロールを見直す


コレステロールは人間の体内に存在している脂肪分の一つです。脂肪は有害な物質であるかのようにいわれることがしばしばありますが、本来は人間の身体にとって欠かすことのできない大切な物質です。

コレステロールは人間の全身を作っている細胞の膜を形作っているほか、性ホルモンや副腎皮質ホルモン、胆汁酸などを作る材料にもなっています。それだけでなくビタミン類などを代謝する役割もあり、人間の身体にとってはとても重要なのです。

体内のコレステロールの量は人間の身体が一定の状態を保とうとする機能によって常に安定していますが、何らかの原因によって血液中のコレステロールの量が増加すると動脈硬化が起こり、血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。

このようなコレステロールの増加、特に、悪玉LDLコレステロールや中性脂肪の増加、さらに善玉HDLコレステロールの低下は最近では脂質異常症と呼ばれていますが、かつて高脂血症と呼ばれ、

「総コレステロール値(220mg/dl以上)」を高脂血症とされていました。

しかし、総コレステロールの中の善玉(HDL)コレステロールが多いことは良いことなのですが、その場合でも総コレステロール値が高くなるため、高脂血症と診断される可能性があったのです。

そこで、総コレステロールの中の善玉HDLコレステロールと悪玉LDLコレステロールを分けて、「悪玉(LDL)コレステロールが多い場合」、「善玉(HDL)コレステロールが少ない場合」、「中性脂肪が多い場合」という3つのタイプを明確にし、これらいずれも「脂質異常症」としました。

その脂質異常症の診断基準として

①高LDLコレステロール血症 … LDLコレステロール値140㎎/dl以上

 境界域高LDLコレステロール血症 … LDLコレステロール値120~139㎎/dl以上

②低HDLコレステロール血 … HDLコレステロール値40㎎/dl未満

③高トリグリセライド(中性脂肪)血症…トリグリセライド値150㎎/dl以上

としました。

しかし、その後、各地の病院における調査報告から、LDLコレステロール値が正常(140mg/dl未満)なのに、心筋梗塞を起こしたという例が非常に多いことが分かってきました。一方、そうした患者さんの多くが、善玉とされるHDLコレステロール値が低いか、正常の範囲内(40mg/dl以上)であっても低めという傾向がみられました。それらのことから、LDLとHDLは別々に考えるのでなく、両方のバランスが重要とされ、L/H比はその目安として注目されるようになってきています。

L/H比とは…

 LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値 

例)LDL(悪玉)コレステロール値が135mg/dl・HDL(善玉)コレステロール値が45mg/dl

→ 135÷45=3  L/H比は3.0

例で示したLDLとHDLの数値(135mg/dl、45mg/dl)は、個別にみると、どちらも現在の基準では「正常」の範囲です。治療が必要とされるのは

・LDLコレステロール値が140mg/dl以上  または

・HDLコレステロール値が40mg/dl未満  なので

どちらにも該当せず、健康状態ということもできます。

ところがL/H比でみると3.0というのは、じつは動脈硬化が進んだ「かなり危険」な領域なのです。

コレステロールは血液中に流れ込むと、たんぱく質と結合してリポたんぱく質という物質になります。

リポたんぱく質にはいくつかの種類がありますが、特に重要なのはLDLコレステロール(低比重リポたんぱく質)とHDLコレステロール(高比重リポたんぱく質)です。LDLは肝臓で作られたコレステロールを全身に運び、HDLは血管の壁にたまったコレステロールを肝臓に回収する役割があります。

LDLコレステロールは増えすぎると動脈硬化の原因となります。LDLにはこうした働きがあるため「悪玉コレステロール」と呼ばれ、反対にLDLを回収する働きのあるHDLは「善玉コレステロール」と呼ばれるのです。HDLコレステロール値が高ければ、コレステロールの回収量も多いことを意味し、脂質異常症になりにくいことになります。一方、悪玉のLDLコレステロールが血液中に増えると、血栓ができやすくなり、心筋梗塞などのリスクが高まります。

ではL/H比は、どの程度ならいいのでしょうか。

  • L/H比が2.0を超える……血管内のコレステロールの蓄積が増えて動脈硬化が疑われる

  • L/H比が2.5を超える……血栓ができている可能性がある(心筋梗塞のリスクも高い)

  • L/H比が1.5以下……血管内がきれいで健康な状態    です。

そこでL/H比の目安として、「ほかに病気がない場合には2.0以下に」、また「高血圧や糖尿病がある場合、あるいは心筋梗塞などの前歴がある場合には1.5以下に」することが望ましいとされています。L/H比を改善するには、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすことの両方が大切です。

そこでまず、LDLコレステロールを減らす3つのコツについて知っておきましょう。

①コレステロールの合成を促進しない

私たちが食事から摂るコレステロール量は1日約0.3~0.5gで、体内で合成される1日約1~1.5gの約3分の1にすぎません。すなわちコレステロールの70~80%は体内で脂質・糖質・タンパク質の三大栄養素を材料に、主に肝臓で合成されます。このような体内でのコレステロール合成は、休息時に盛んになり、また大量に食べたり、砂糖を多く摂取してエネルギー源を急速に摂り入れた時も、コレステロール合成は盛んになります。つまり、摂取カロリーが必要以上に増えると、コレステロールの体内合成が促進され、LDLコレステロールが増えるので、基本は食べ過ぎないことです。一方、有酸素運動をしているときは、コレステロールは合成されません。コレステロールの多い食品を避けても、食べ過ぎや甘味嗜好があり、運動が嫌いな人は体1内でコレステロールが合成されやすいといえます。

日本動脈硬化学会によると、特に食事で気をつけたいのは、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・コレステロールの3種類の脂肪分です。飽和脂肪酸は鶏肉の皮・バター・ラード・カップ麺、トランス脂肪酸はマーガリン・スナック菓子などに多く含まれています。これらの食品とともに、卵黄・いくら・するめなどのコレステロールが多く含まれる食品は避けるようにしましょう。

②LDLコレステロールを減らす食品を摂る

コレステロールを減らそうとする場合、鶏卵や魚卵などコレステロールの多い食品を制限することが多いはず。その反面、コレステロールを減らす食品のことは忘れがちです。

植物性たんぱく質(大豆や豆腐、納豆・大豆・玄米・雑穀など)、水溶性食物繊維(海藻、きのこ、豆、根菜など)には、コレステロールを吸着し、減らす働きがあります。また、魚類(イワシ、サバ、マグロなど)に多い不飽和脂肪酸(DHAやEPA)は中性脂肪を減らすと同時に、心筋梗塞のリスクを高める小型タイプのLDLコレステロールを抑制する働きがあります。毎日の食事に、こうした食品を取り入れましょう。

③LDLコレステロールの酸化を防ぐ

血液中のLDLコレステロールが酸化すると、動脈硬化が促進され、血栓ができやすくなります。酸化を引き起こす最大の原因がタバコなので、禁煙をしましょう。また、酸化を防ぐビタミンCやEを多くふくむ食品(緑黄色野菜、ナッツ類など)をきちんと摂ることも忘れずに。

LDLコレステロールは小型化すると血管壁に吸収されやすくなり、血栓をつくり心筋梗塞のリスクを高めるので「超悪玉」と呼ばれます。中性脂肪が増えると、小型LDLコレステロールも増える傾向がみられます。中性脂肪が高い場合、その原因の多くは、アルコールや糖質のとりすぎです。

また、中性脂肪値を下げるには運動も効果的です。

《善玉コレステロールを増やす》

善玉のHDLの低下に対して食事はほとんど関係がなく、代わりに効くのが運動と言われています。低HDLの原因は、喫煙、肥満、運動不足の3つですが、多くの場合、運動すれば数値は上がりと言われています。これは代謝が上がることで、善玉コレステロールの生成が活発になるとされています。

とくにジョギングやウォーキングなどの有酸素運動は、HDLコレステロールを増やすのに効果があります。

ウォーキングなら1日30分程度を週4日以上おこなうことを目安にしましょう。また、1日の歩行数が1万歩以上の人は、2000歩未満の人と比較すると、HDLコレステロールが平均で10%以上多いとするデータもみられます。したがって、仕事などの関係で定期的な運動ができない場合でも、「できるだけ多く歩く」ことを心がけましょう。階段(昇り)は負荷が大きく、運動効果も高いので、駅や会社ではかならず階段を利用することも忘れずに。

また一般に、血糖値が高い人や肥満気味の人は、HDLコレステロール値が低い傾向がみられます。ウォーキングなどの有酸素運動は血糖値の改善、肥満の解消により、HDLコレステロールを増やすことにもつながります。さらに、喫煙はHDLコレステロール(善玉コレステロール)の数値を下げてしまうことも分かっているため、喫煙の習慣のある方は禁煙をおすすめします。


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