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  • 院長 田中康文

後鼻漏


鼻水は通常、鼻の前に流れてきます。これを前鼻漏といいますが、後鼻漏は反対で鼻の奥からのどに流れてしまうのです。鼻水がのどを降りることは誰にもみられ、気づかない程度にこの現象は生じています。鼻は外からの異物や細菌、ウイルスの侵入を線毛と鼻水によってブロックしており、このような鼻水は鼻腔、副鼻腔から分泌され、線毛を潤したあと、のどへ降りていくのです。

このように、普通の生理現象として鼻水はのどを降りているのですが、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの鼻の病気により、鼻腔内粘膜の腫れが強くなると、鼻をかんでも鼻水が出にくく、増えた鼻水はのどに流れ込んでしまいます。このような後鼻漏はのどのイガイガや不快感だけでなく、粘り気のある鼻水の場合は口臭の原因になり、さらに鼻水が気管支に流れ込むと、痰が絡み、咳や痰が出る(特に朝起きた時)、長く話していると咳が出る、咳が長引く、夜寝られないなど、生活に支障をきたすこともあります。

後鼻漏は成人の3割にみられると言われていますが、後鼻漏を知っている人は全体のわずか2.2%と非常に少なく、自分の症状が後鼻漏と知らずに苦しんでいる人はもっと存在すると考えられています(ホームページ「あれこれ」の「後鼻漏自己チェックリスト」を参照)。

後鼻漏の治療として、西洋医学的には慢性副鼻腔炎が原因で発症した後鼻漏は、抗生物質・静菌作用のあるマクロライド系抗菌薬やムコダインなどの痰を切る薬などが用いられ、アレルギー性鼻炎に伴う後鼻漏には抗ヒスタミン薬などがよく用いられます。これらの薬は症状を緩和することができますが、再発しやすい傾向があります。

一方、漢方薬は体質を見直し、偏りを是正し、病気を引き起こす原因を根元から改善します。

①急性鼻炎の水溶性鼻水を伴う後鼻漏の治療には小青竜湯や五苓散を中心に用います。また、鼻水の粘稠度に応じて桔梗石膏エキスを加味します。胃もたれがあり、小青竜湯が合わない場合には苓甘姜味辛夏仁湯を用います。鼻づまりが顕著な場合には、葛根湯加川キュウ辛夷や葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用します。

②慢性鼻炎・副鼻腔炎の粘稠鼻水を伴う後鼻漏の治療には辛夷清肺湯を中心とする方剤を用います。

後鼻漏の多くは慢性鼻炎や副鼻腔炎に伴う粘稠鼻水が原因です。副鼻腔炎の症状が強ければ、荊芥連翹湯をさらに加味します。

③後鼻漏による慢性咳嗽には清肺湯を考えます。

また、補中益気湯などで胃腸を調えて慢性鼻炎や副鼻腔炎が長引かないようにする予防医療も重要です。

 

【鼻うがい】

薬だけで症状が治まらない場合、鼻うがいをすることでよくなることがあります。鼻から生理食塩水を注入し、鼻腔内の鼻汁や細菌・花粉などの異物を洗い流して口から出すという方法です。

鼻うがいだけで55~70%の患者が後鼻漏の症状が改善したという報告もあり、効果的な治療法として広く取り入れられています。

その詳細とその他の関連事項はホームページ「あれこれ」の「鼻うがいとその他」に記載していますので参考にして下さい。


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