おねしょは、寝ている間におしっこをもらしてしまう現象をいいます。おねしょは2歳児の50%、4歳児の25%にみられる普通の現象で病気とは考えません。しかし、学童期(6歳以降)まで続くと心理的や社会的に問題がおこることがあります。このような状況を改善する目的で積極的な生活指導や薬による治療を行う場合に夜尿症という言葉を使用します。
おねしょは、寝ている間につくられる尿の量と,尿をためる膀胱の大きさのバランスが悪いために起こります。
そのため、おねしょ・夜尿症のタイプは以下のように分類されています。
(1)夜間、腎臓で作られる尿が増えてしまう "多尿型"
おねしょ・夜尿症の子供は、夜に分泌される抗利尿ホルモンが少なく、夜尿の原因となっていることがあります。
このような抗利尿ホルモンは尿として作った水分を再度くみ上げて体内に戻すという働きがあり、主に夜の睡眠中に脳から分泌されます。このとき、抗利尿ホルモンが少ないと、水分の再吸収が少なくなり、尿がたくさん作られ、多尿となることがあります。夜間に作られる尿の量は年齢とともに次第に少なくなり、4~5歳になるとだいぶ減ってきますが、一部のヒトは6歳を過ぎてもその量が減らないことがあります。しかし、いずれは自然と減少していきます。
(2)尿を受ける膀胱の蓄尿機能が十分ではない、つまり膀胱が小さい "膀胱型"
膀胱にためられる尿量は、6~7歳で150ml、7~8歳で200ml、8歳を超えると250mlとなるのが普通といわれています。しかし、おねしょ・夜尿症の子供では、膀胱の発達が遅れ、膀胱の容量が年齢の割には少ないことがあり、夜尿の原因となることがあります。この場合、日中もおしっこが近い傾向があります。
(3)多尿型と膀胱型、両方の特徴を有する "混合型"
(4)上記に当てはまらないタイプ
昼間は問題ないが睡眠中,膀胱機能が不安定になり、夜尿をしてしまうことがあります。
そのほかに、精神的ストレスや腹部の冷えも夜尿の原因になることがあります。特に、ストレスが夜間の抗利尿ホルモンの分泌に影響する可能性も指摘されています。
夜尿症は6歳で約10%、8歳で約8%、10歳で約5%,16歳で約2%程度にみられ、どの年齢でも男子が2~3倍多いといわれています。西洋医学では抗利尿ホルモン、抗精神薬、膀胱収縮抑制作用の薬なども使われますが、子供の成長過程でこのような薬を使うことが良いのか、疑問がもたれています。
漢方ではいくつかの体質的な原因を捉え、それに応じて漢方薬を決めます。
たとえば、
①しっかりとした体格、夜尿に気づかない子供には葛根湯、麻黄湯、麻杏甘石湯など。
これらの漢方藥はすべて麻黄という生薬が含まれ、麻黄により脳が適度に刺激され、抗利尿ホルモンの分泌が促されるとともに、膀胱の出口の括約筋の緊張が高められ、膀胱の「閉まり」がよくなる可能性があります。
このタイプの夜尿の症状としては尿の量が多い、尿意で目を覚ますことがない、漏らしてしまった後の不快感にも目を覚まさず朝まで熟睡しているという症状があります。
②緊張したり母親に叱られたりしてストレスが多い子供には抑肝散加陳皮半夏、柴胡桂枝湯、桂枝加竜骨牡蛎湯など。
③虚弱で体力がない、胃腸が弱い子供には、 小建中湯、補中益気湯など。
まず体全体を整えれば夜尿症も改善していくだろうという作戦で用いられます。
④のどが渇きやすく、水分摂取が多い子供には、白虎加人参湯
このタイプも、夜尿に気づかない、寝ぼけることがある、尿の量が多いという症状が見受けられます。体の熱を冷まし、のどの渇きをことで水分量を調節する目的で使われます。
⑤手足が冷たい、腰が冷える子供には苓姜朮甘湯
体を温め、冷えからくる尿の回数や量が多い場合に使われます。
⑥膀胱が発達できていない子供には六味丸
この漢方薬は、発育を促進する作用があります。
《家庭での夜尿症対策》
寝る前には必ずトイレに行かせたり、就寝前の水分摂取を調整するなど、まずは、家庭でできるおねしょ対策を実践していきましょう。
①夕食から就寝までの時間をあける
摂取した水分は、だいたい3~4時間かけて膀胱に尿として溜まるとされています。夕食から就寝までの時間があけば、寝る前にたっぷりとおしっこができるため、夜尿のおしっこの量を減らすことができます。
ただ夕食から就寝までの時間をあけたいからといって夜更かしをさせてはいけません。
夜更かしをすると朝起きるのも遅くなりがちです。朝になっても眠りが深い状態だと朝の尿意に気づけなくなり、その結果、おねしょをしてしまうこともあります。
②夕食時・夕食後に甘い物の摂取は控ましょう。
夕食後に砂糖を使ったお菓子や果物などのデザートの摂取と、就寝して間もないタイミングでおこるおねょ・夜尿症には関連性があるとされています。これは、糖分には塩分以上に利尿作用があるためだとされています。
③昼間のトイレを促しすぎない
尿を溜めることをしないと膀胱が小さいままになってしまい、膀胱を成長させる妨げになる場合があります。
膀胱が成長できているほど寝ている最中に尿を溜めることもできます。昼間は子どもが尿意を感じたら自発的にトイレに行かせることが大切です。
お子様の夜尿症でお困りの方は、ぜひ一度ご相談下さい。