東洋医学の独特な陰陽学説は非常に難解な学区説ですが、その意味する所は、この世の現象を2つの対立する視点から分析すると理解しやすいのではないかという学説です。
たとえば、太陽は陽であり、月は陰である。 太陽は熱を放散し、明るく、暖かい存在ですが、月は引力により、海水を引き上げ、暗く、冷たく静かです。 男性は陽で、女性は陰です。男性は外に向かって活動的に働き、女性は家庭を守り、潤いの性質をもつ存在です。 このように、陽は火に代表され、外に向かって活動的であり、明るく、放散の性質をもち、陰は水に代表され、冷たく、寒く、静かで、内に向かって凝集の性質を持ちます。 しかし、この陰と陽は見方、方向を変えると陰陽は変わります。
たとえば、日本列島は太陽に照らされて明るい時は陽に属し、地球の反対側は陰に属します。しかし、その逆になると、日本列島は陰に属し、地球の反対側は陽に属します。
男性は上述したように一般的に陽で、女性は陰ですが、家庭内では明るく活動的な存在を陽とすれば女性は陽であり、疲れて寝ている男性は陰です。このように、視点が変わればその位置づけも変わります。 従って、陰と陽は絶対的なものではなく、相対的なものです。
この相対的な見方によって、意味が変わるというのは、大変重要なことです。 東洋医学において、陰虚内熱という言葉があります。 陰が減り、陽が相対的に増えて熱が出るという現象です。 東洋医学では昼間は陽に属し、午前10時から午後2時の間は陽の最盛の時間帯ですが、その後は徐々に陽が減り、代わりに陰が少しずつ増えて、午後10時から午前2時の間は陰の最盛期の時間帯です。その後は再び陰が徐々に減り、陽が次第に増えて、陰と陽が1日の中で繰り返されます。
このような昼間の陽の時間帯は活動的に動き、夜の陰の時間帯は潤いと昼間に傷ついた体を癒します。 しかし、夜、睡眠を取らずに、運動したり、スマホをいじったり、考え事をすると、陽の時間帯と同じように活動的になり、その結果、陰が減り、相対的に陽が増えます。そうなると、夜中に上半身が火照ったり、足の裏が熱く、布団から足を出して寝たり、あるいは寝汗をかくなどの熱の症状が出ます。そのため、睡眠が浅く、寝ても疲れが取れず、朝起きても体がシャッキとしません。
このような状態では、寝る前に睡眠薬や安定剤を飲んでも、また熱冷ましの薬を飲んでも体調はあまり改善されません。 大切なことは陰の時間帯は安静にし、潤いとゆとりをもち、夜中に熱が発生すれば潤いを補う漢方薬を飲まなければ改善しません。
アトピー性皮膚炎では皮膚が乾燥しています。 しかし、同じ乾燥でも潤いが足りなく乾燥している場合と、皮膚炎によって水分が飛ばされて乾燥している場合があります。 潤いが足りない場合は潤いを増やす漢方薬を飲んだり、保湿剤を塗布すればいいのですが、炎症がある場合は潤いを与えても焼け石に水ということになって、乾燥はなかなか改善しません。 この場合は炎症を抑える漢方薬や塗り薬が必要です。
このように東洋医学では、同じように見える症状でも常に陰と陽という2つの要素相対的な視点によって分析して治療を行います。