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睡眠薬の種類と特徴(不眠症:その7)


ところが、睡眠薬は怖い、強い副作用がある、体に悪いなどの悪いイメージを持たれています。現在広く使用されている睡眠薬は一般的に安全で身近なものになってきています。しかし正しく服用しないと思わぬ副作用を経験することがあります。睡眠薬を使うべき時はしっかり使い、よくなったら少しずつ自然な眠りを取り戻せるために、睡眠薬について正しい知識をつけましょう。

睡眠薬は、睡眠導入剤や眠剤などとも呼ばれたりしますが、その作用メカニズムの違いから大きく「脳の活動を抑制する睡眠薬」と「自然な眠気を強める睡眠薬」の2つに分けることができます。現在使われている睡眠薬は、脳の活動を抑制する睡眠薬が中心になります。GABA(ギャバ)という脳内の抑制性の神経伝達物質の働きを強めることで、大脳辺縁系や脳幹網様体と呼ばれる部分の神経活動を抑えることで催眠・鎮静作用をもたらす薬です。

それに対して近年は、自然な眠気を強める睡眠薬が発売されています。睡眠と覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていく薬です。脳の活動を抑制する睡眠薬の効き方は、脳の機能を低下させるので、疲れきって寝てしまった時のような強引さのある形です。それに対して自然な眠気を強める睡眠薬は、本来の眠気を強める形になります。ですから、効果が人によっても異なります。現在発売されているのは、生理的なリズムに関係する2つの物質のメラトニンとオレキシンに作用する薬です。

メラトニン受容体作動薬:ロゼレム

オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ

ロゼレムの語源は「バラ色の夢を見ましょう」との願いを込めて「rose」+「レム睡眠」から命名されています。ロゼレムは、体内時計のリズムを司っているメラトニンの分泌を促す薬です。メラトニンは20時頃から分泌され、深夜1~2時頃をピークに、明け方になると光をあびて消えていくという物質です。年齢を経るごとに分泌量が減少するといわれていて、ロゼレムはこのメリハリをつける薬です。

ベルソムラの語源はフランス語で「belle(美しい)」+「somnia(眠り)」に由来します。ベルソムラは、覚醒状態があるときに働いているオレキシンという物質の働きをブロックし、睡眠状態へスイッチを切り替えていくような薬です。どちらも生理的な物質に作用するため、依存性が極めて少ないといわれています。その一方で強引さがないため、効果や副作用に個人差が大きいという特徴があります。

〔知っておくべき4つの睡眠薬の種類〕

睡眠薬は大きく、その作用時間から超短時間型(2~4時間)、短時間型(6~10時間)、中間型(12~24時間)、「長時間型(24時間以上)」の4つに分けられます。以下に作用時間ごとの代表的な薬剤を挙げます。

超短時間型:マイスリー、アモバン、ルネスタ、ハルシオン

短時間型:レンドルミン、リスミー、エバミール、デパス

中間型:ベンザリン、ユーロジン、サイレース

長時間型:ドラール

これに対して、不眠症も大きく4つのタイプに分けられます。

入眠障害:寝つきが悪い。

中途覚醒:睡眠中に何度も目が覚める。

早朝覚醒:朝早く目が覚める。

熟眠障害:ぐっすり眠ったという感覚が得られない、眠りが浅い。

入眠障害に対しては、超短時間型、短時間作用型の睡眠薬、時にベルソムラが使われます。

中途覚醒に対しては、頓用で超短時間型を使うか、あるいは短時間型、中間型、あるいはロゼレム、ベルソムラなどを使います。

早朝覚醒、熟眠障害に対しては、中間型、長時間型の睡眠薬が使われることが多いですが、時にロゼレム・ベルソムラ、さらにはリフレックスなどの鎮静系抗うつ薬やセロクエル・ジプレキサ・リスパダールなどの抗精神病薬が使われることがあります。

そのほかには、悪夢に対して、浅いレム睡眠を減らすといわれているトリプタノールなどの三環系抗うつ薬を少量使い、睡眠覚醒リズム障害にはロゼレムが使われます。ロゼレムは、体内時計のリズムを整える作用が期待できます。

そして不眠で悩んでいる期間の長さも大切です。慢性的な不眠では、作用時間が長い睡眠薬を中心に使います。これは睡眠薬の使用が長期にわたった時に、やめやすくするためです。ベルソムラのような自然な眠気を強める睡眠薬も依存性がないため、慢性的な不眠に向いています。それに対して一時的な不眠では、短いタイプの睡眠薬で効果の実感が強いものを使います。一時的な不眠を改善することで、心身の状態がよくなって不眠も改善することを期待していきます。同様に、連日の夜勤の人は長時間型、単発の夜勤であれば、持ち越し効果の少ない短時間型のほうが良いといわれています。

〔各種の睡眠薬のメリット・デメリット〕

  1. ベンゾジアゼピン系(ハルシオン、レンドルミン、リスミー、ベンザリン、ユーロジン、ドラールなど) ハルシオン、レンドルミンは飲むとすぐに効果を実感できます。しかし、これらの超短時間型、短時間型のものは依存性がつきやすく、離脱症状が出現しやすいです。離脱症状とは、薬を減らすと不眠が強まってしまい、睡眠薬はやめられなくなってしまうことです。中間型のベンザリン、ユーロジンと長時間型のドラールはこのような離脱症状は比較的起こしにくいとされています。筋肉の緊張が緩み、(筋弛緩作用)ふらつき、転倒などがあらわれやすくなります。 長時間型のものは、持ち越し効果が出やすいです。持ち越し効果とは、翌朝まで眠気が続いてしまうことです。

  2. 非ベンゾジアゼピン系(アモバン、ルネスタ、マイスリー) ベンゾジアゼピン系より筋弛緩作用が少なく、また依存性も低く、安全性が高いです。しかしマイスリーは安易に処方されることが多く、乱用され、依存が強く出てしまうことがあります。非ベンゾジアゼピン系は効果がマイルドで、頑固な不眠には効果がみられないことがあります。アモバンは苦味があり、ルネスタは苦味がやや少ないです。高齢者に対しては、ふらつきの少ない非ベンゾジアゼピン系か、下記のロゼレム、ベルソムラなどの薬が良いといわれています。

  3. メラトニン受容体作動薬(ロゼレム) 筋弛緩作用や依存性がないため安全性が高いです。しかし効果は若干弱く、速効性はありません。

  4. オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ) ロゼレムより効果の実感が早く、服用開始から比較的早期に効果が出始めます。中途覚醒や早朝覚醒に効果があるが、入眠作用も強引さはないがある程度効果を期待することができます。しかし時に翌朝に眠気や倦怠感が残ってしまったり、悪夢をみることがあります。

〔睡眠薬中断法〕

睡眠薬は長時間作用型だと翌朝まで薬の影響が残り、目覚めが悪く朝ボーッとするので、一般に短時間作用型のほうが好まれます。実際に使われているのもほとんどが短時間作用型/超短時間作用型です。しかし短時間作用型/超短時間作用型は早く血中濃度が下がり、薬の急激な変化に体が慣れようとするので、離脱症状が起こりやすく、特にベンゾジアゼピン系睡眠薬は依存症になりやすいとされています。しかしこのようなベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存症から離脱することは可能です。

よくあるのは、睡眠薬の弊害を聞いて心配になり、突然中止しようとする場合で、たいてい強い離脱症状が起こり、失敗します。一度失敗すると、その恐怖と不安のためにますます離脱しにくくなります。超短時間型、短時間型睡眠薬の服用量はそのままにして、離脱症状が起こりにくい中間型・長時間作用型を併用しながら、その上でゆっくり減量しましょう。

減量の方法として、漸減法(徐々に減量する)と隔日法(1日目はそのままの数量にしてその翌日のみ減量する)があります。1ヶ月ごとに3割減らすくらいが失敗しにくいと言われています。減量の過程で、寝付けなくなったり、途中で目が覚めるようになった場合は、無理をせずに薬を元の量に戻して、その後、タイミングをみて、また少しずつ減量して少しずつ地震をつけていくようにします。

不眠症の治療は、原因疾患の治療、環境の整備などを合わせておこなうことが大切です。生活や職場環境などが安定し症状がよくなってきたなら、計画的に徐々に減量したり頓服のような飲み方に変えることも検討します。治療方針もなく、ただ漫然と続けることは好ましくありません。

〔間違った対処方法と注意点〕

寝付けないとき、お酒に頼る、なるべく早く寝る。この2つは不眠を悪化させます。お酒は寝つきを一時的に良くしますが、睡眠の質を落としてしまいます。また、なるべく早く寝て、寝床でゴロゴロして眠れない時間をすごすことはなかなか眠れないという失敗した認知を強めてしまいます。眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。それでも眠れなければ超短時間型の頓服をすぐに使うようにします。寝床に入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。

[睡眠薬の服用の時の注意点]

  1. 寝る直前に飲みましょう

  2. 食後すぐに飲まないようにしましょう ドラールを食後に飲むと、効果が出すぎることがあります。ロゼレム、ルネスタ、ベルソムラなどは、食事によって効果が弱くなる可能性があります。寝る前に胃の中に食物を入れるというのは眠れなくなるのでやめたほうが良いです。頭が眠っていても、内臓が動いていると快眠にはつながりません。

  3. お酒と睡眠薬一緒に飲むのはやめましょう。

  4. 睡眠薬は最初は毎日飲むようにしましょう。 ときどき飲んではすぐやめたりを繰り返すと、離脱症状が起きやすくなります。一か月以上連用すると、身体的依存が生じて、中断した場合にかえって寝られなくなることがあるので、注意が必要です。この場合は、ゆっくり減らしたり、隔日投与をするなど徐々に減らすのが大切です。軽度の不眠症の場合は、よく眠りたいときに限って睡眠薬を使用する場合もあります。しかし1週間に3、4日も眠れない日がある場合は、毎日きちんとのみ、不眠を改善してから睡眠薬を減らすのが、薬離れの近道だといわれています。

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