• 院長 田中康文

⑪小児と頭痛:その特徴と対策・治療(西洋医学からみた頭痛Q&A:その11)

(小児の頭痛)

Q.子どもも頭痛があるのですか?その特徴と対策、治療を教えて下さい。

【回答】

子どもも頭痛を訴えることは珍しくなく、小学校高学年から中学生が多いのですが、時として就学前の4~6歳頃から頭痛を訴える子もいます。

就学前や就学前後の年少者にみられる頭痛は、生活の中に強制されるものが多かったり、周囲の顔色をみて自分を抑制しなければならない状態が過度になっている可能性があります。

習い事のスケジュールが過密でいつも急かされて懸命に適応している子、親がしつけに厳しかったり、子どもへの干渉が強かったりして親や年長の兄弟姉妹の顔色をいつも見ている子、また、親が年長の同胞に厳しくしているのをみて、本人自身は言われていないのに適応しすぎてしまう年少の子などもいます。

年少者の頭痛は、本人が自分を抑えなければならないものが生活環境にあるのではないかと想像してあげることが大事です。


子どもの頭痛は大人と同じように一次性頭痛二次性頭痛の2種類に大別されます。

一次性頭痛は「原因となる病気がない頭痛」であり、子どもの一次性頭痛のほとんどは片頭痛と緊張型頭痛で、両方を合わせ持っていることもあります。痛みは片頭痛の方がつらいのですが、中学生になるとストレスが増え、緊張型頭痛が毎日続いてつらい、と訴える子どももいます。

二次性頭痛は原因となる病気がある頭痛で、発熱がみられる場合、その多くはインフルエンザやウイルス性の感冒などですが、嘔吐などもみられるときには髄膜炎などの可能性もあり、そのほかには副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による頭痛や、中には脳腫瘍など中枢神経の病気などが隠れていることがあります。頭痛が進行性に悪化したり、てんかんなどの症状がみられる場合は、大きな病院で精密検査をする必要があります。


片頭痛は10歳すぎに始まることが多いのですが、低学年や就学前の年少者でもみられることがあります。この就学前の年少者を中心に、吐くだけで頭痛がみられない子もいます。このような嘔吐を周期的に繰り返すが、症状のない間欠期は正常で、数年の経過により自然治癒することを特徴とする一群があり、周期性嘔吐症候群と呼ばれています。この症候群はストレスや緊張が引き金になることが多く、しばしば光をまぶしく感じたり、音に過敏になったり、さらに片頭痛に移行することもあり、これらのことから片頭痛の一つのタイプと考えられています。

片頭痛は頭の片側が痛むことから片頭痛という名称がつけられていますが、実際には子どもや大人でも、頭の両側が痛むことがあり、特に子どもではむしろ両側を痛がることが多いといわれています。典型的な片頭痛はこめかみから目のあたりにかけて、ズキズキとした痛みや、脈打つような痛みですが、その痛み方を言葉にできない子もいます。また痛む場所は頭の両側やおでこ、頭のてっぺんなど、さまざまですが、後頭部が痛むことは少ないといわれています。

片頭痛を持っている子の中には大人と同様に、頭痛が起こる前にキラキラした光がみえたり、だんだん視野が狭まるなどの視覚の異常が前兆として現れることがありますが、片頭痛の子どもたち全員にみられるわけではありません。また大人と同様に子どもの片頭痛も動作によって悪化しますが、階段の上り下りなどの運動だけではなく、ちょっとしたおじぎのような動作や首を少し振っただけで痛みがひどくなることもあります。ただ、大人の場合とは異なり、短い時間で痛みが治まることが多く、長くても半日程度で収まるといわれています。さらに子どもの片頭痛は吐き気や嘔吐を訴えることが多く、テレビなどの視覚や音刺激をいやがり、頭痛が起きると部屋を暗くして横になってしまう子もいます。

また子どもの片頭痛は顔面蒼白、腹痛など、頭痛以外の症状が目立つことも少なくありません。このような腹痛は片頭痛と同時に起こったり、腹痛が先行して頭痛につながることがあり、腹部血管が拡張した結果起こるとされています。

このように子どもの片頭痛は大人の片頭痛と同じような症状もみられますが、大人と違う点もみられ、その特徴は

  1. 頭の両側が痛くなることが多い。

  2. しばしば吐き気や嘔吐を伴う。

  3. 頭痛発作時間が一般的に短い。 (子どもは1時間ぐらいでおさまることが多く、長くても半日のことが多い。大人の頭痛持続時間は4時間~72時間といわれている。)

  4. 頭痛と同時に、あるいは先行して腹痛がみられることがある。

このような特徴のため、頭痛やそれに伴う腹痛が突然始まり、短時間で治ってしまい、痛みがなくなればケロッとして元気になるなど、あまりにも症状が極端であるため、親や学校から仮病やさぼりではないかと誤解されることもあります。また子どもは頭痛があっても、言葉でうまく伝えられなかったり、周囲の大人から気のせいと言われたりして放置されてしまうこともあり、不登校につながることもあります。このような子どもの片頭痛は大人と同様に、しばしば痛みを誘発する誘因があります。

ストレス、精神的な緊張、疲れ、激しい運動、気圧の変動、強い光、人ごみ、朝寝坊、寝不足、朝食抜き、月経周期、食品などの他にスマホなどのブルーライトも因子になります。片頭痛の誘因は、子どもによってさまざまですが、二つ重なると起きる確率が上がるといわれています。

しかし、天気は変えようがないので、気候や季節の変わり目などは、片頭痛のリスクを少しでも下げるように、睡眠リズムに注意することが大切です。また、チョコレートも誘因になるのですが、多く食べなければ痛みが起こらないこともあり、それほど控えなくてもいい場合があります。避ける必要がないものは無理に我慢しない。それだけでもストレスはだいぶ減ります。


このような片頭痛は発作性の強い頭痛であるのに対し、緊張型頭痛は強くはありませんがだらだら続き、毎日のように痛みを訴えることもあります。その頭痛は締め付けられるような痛みや、ずーんとした重い痛みで、子どもたちはなんとなく痛いと表現することもあります。痛む部位は頭の後ろや肩、首など様々で、頭全体が痛いと訴える子もいます。緊張型頭痛に伴って、首や肩のこりや、吐き気を訴えることがあります。吐き気は片頭痛のときに感じるものと比べると軽いものが多く、強い吐き気は伴わないとされています。


このような緊張型頭痛の原因は大人ばかりではなく子どもも肉体的・精神的ストレスが関係しているといわれています。人間関係や受験、試験勉強など、頭痛の誘因となるストレスの種類はさまざまです。

年少児も思春期ほど多くはありませんがストレスがかかると慢性的に緊張型頭痛を訴えることがあります。生活習慣、特に睡眠が頭痛と深く関わっています。寝不足でも寝すぎでもよくなく、お子さんにあった睡眠時間を毎日守ることは大切です。またパソコンやゲームなどを長時間することによって、同じ姿勢を長く保つことにより血流が悪くなり、首や肩が緊張状態となって緊張型頭痛を引き起こすこともあります。


このように片頭痛と緊張型頭痛はそれぞれ症状に特徴がありますが、 子どもは症状を正確に表現できまいことが多く、また頭痛は本人しか分からない症状なので、診断にはどの年齢でも問診が中心になります。しかし、「どんなふうに痛い? ズキズキ痛い? ズシンと痛い?」などと質問攻めにすると、子どもは混乱してしまうため、子どもから話すような形をとるなど聞き方に注意が必要です。

片頭痛と緊張型頭痛の両方が混ざっていることもあり、どちらの頭痛か分からないことがあり、その場合は、「90度に腰を曲げてお辞儀をしたまま頭を振る」という動作をしてみて、痛みが増すようであれば片頭痛の可能性が大きいと思われます。また片頭痛は、特に母親が片頭痛をもつことが多く、家族歴が子どもの頭痛の診断の参考になります。

子どもの頭痛の治療には、薬物療法と非薬物療法(薬を使わない治療)があります。片頭痛も緊張型頭痛も、子どもに勧められるのはまず薬によらない治療です。子どもも親も片頭痛と緊張型頭痛の違いをしっかりと理解し、どのように頭痛に向き合うかを知ることが大切です。

まず、生活習慣を改善することを重視します。早寝早起きは頭痛の予防に有効で、睡眠時間を1時間多くしたことで頭痛が改善する子もいます。子どもの生活を見直し、おけいこ事などを整理して、生活をシンプルにするのも一案です。特に片頭痛の場合、早寝・早起きをして、しっかり朝食をとり、寝すぎ、寝不足、長時間の昼寝は避けましょう。

その上で、次のように誘因となるものを避けるよう心がけることが大切です。



  • ブルーライトが発生するスマホ、パソコン、ゲームなどは夜間の使用を制限する。

  • 日光や明るすぎる照明を避ける(帽子・サングラスを着用する、夜は間接照明にするなど)。席を窓側から廊下側に移動したら片頭痛発作が減った子もいます。

  • 満員の電車、バス、映画館を避ける。

  • 暖房の効きすぎた部屋、熱い風呂や長湯を避ける。

  • 香水など匂いが強いものを避ける。

  • 気温、気圧、天候の変化に注意する。

  • ストレスをためないようにする。

  • チョコレートを食べ過ぎないようにする。

頭痛の頻度が数か月に1度ぐらいで、学校を休んだり寝込んだりしない程度であれば家庭で様子をみていてもよいと思いますが、頭痛の頻度が多くなり学校や家庭生活に支障が出る日が多くなるとなんらかの対応・対策が必要です。

その場合、鎮痛薬を飲んでぐっすり眠るとすっきりすることも多いので、つらそうなときは鎮痛薬を飲ませるのも一つの方法です。


頭痛の対処法は、片頭痛と緊張型頭痛によって異なりますが、片頭痛なのか緊張型頭痛なのかどうしても分からないときには、片頭痛の対処を行うようにしてください。緊張型頭痛の対処を片頭痛の子にしてしまうと、悪化してしまうことがあるためです。

片頭痛に対しては多くの場合、薬が必要になります。片頭痛の薬物療法では、消炎鎮痛薬のアセトアミノフェン(商品名:カロナール)、イブプロフェン(商品名:ブルフェン)が有効かつ安全な薬剤とされています。これは片頭痛は脳血管周囲に炎症が起こっているので、それを鎮めるために消炎鎮痛薬が有効といわれているからです。子どもでは、体重当たりの量を早期から服用すると効果があります。また、頭痛には吐き気や嘔吐を伴うことも多く、吐き気止めのドンペリドン(商品名:ナウゼリン)も必要になります。


大人であれば頭痛の兆しが表れた時点で頭痛薬を飲むこともできますが、子どもはそういった早い段階で対応することができません。「痛い」と訴えた時点で、迅速に対応してあげることが重要です。片頭痛が起きる時間は「発作」だと考えましょう。今までは元気だったのに急に頭痛を訴えたり、逆に、頭痛で辛そうだったのに治ったと言ってけろっとしていたり。前後にはっきりした症状が少なく、発作の時だけ強い痛みに悩まされます。頭痛が始まってすぐに飲むと効きがよいので、学校に1回分持たせ、先生に頼んでおくとよいでしょう。

片頭痛の発作が起きたら、早めに痛み止めを飲ませ、少し暗くした静かな部屋で安静にさせます。感覚が過敏な状態だと光や音、においなどを痛みとして認識してしまう子もいるので、なるべく外からの刺激が少なく、静かで薄暗い場所で過ごせるように環境を整えていくとよいでしょう。本人が望むなら、程よい温度に調整した氷枕やおでこに貼るシートなどを使って、頭を冷やすのも有効です。なお緊張型頭痛は血行が悪くなるために起こるため、冷やしてしまうと逆効果です。小児が学校で片頭痛発作を起こした場合は、たとえ授業中でも、薬を飲ませ、保健室で1時間でも寝かせてあげるようにしましょう。鎮痛剤を飲むのをためらって、頭痛がひどくなってから使用すると、本来効果がある薬剤も、最良の効果が得られにくくなります。


小学校高学年以上で、アセトアミノフェンやイブプロフェンの効果が乏しい場合には、トリプタン製剤という治療薬が使われます。これは大人に使用されており、効果が期待できますが、日本ではまだ子どもに対して保険適用になっていないため、本人や両親の承諾を得て処方します。ただし、頭痛が起こる前に目が見えにくくなったり、キラキラしたものが見えたりするような前兆がみられる場合はトリプタン製剤を使うことができません。子どもは前兆に気づかないことがあるため、注意が必要です。このような西洋薬で効果がみられない場合や西洋薬だけでは十分な効果が得られない場合は漢方薬も考えます。

  1. デリケートで神経質な子どもに対して抑肝散がしばしば用いられます。 チック症状がみられるような場合や、腹部や背部を触るだけでくすぐったがる子どもにも有効な場合が多いとされています。

  2. 立ちくらみや朝起きづらいなど、起立性調節障害がみられる子どもに対して、半夏白朮天麻湯がよく用いられます。胃弱な子どもも服用しやすいとされています。

  3. 胃腸虚弱で、腹痛やお腹をこわしやすい子どもに対して、小建中湯がしばしば用いられます。頭痛のみならず、胃腸症状も改善されることが多いとされています。 膠飴(米の飴)が含まれているため、甘くて口当たりがよく飲みやすいといわれています。


服用量は、

・就学前であれば成人の1/3量(医療用エキス製剤では1包)を分2で

・小学生は成人の2/3量(医療用エキス製剤では2包)を分2で

・中学生以上は成人量と同じで

服用量の大体の目安は12歳の子どもは大人と同じ量、6歳は大人の半分量と考えると分かりやすいと思います。

片頭痛は通常、月1―2回の頻度で起こります。しかし、片頭痛のさまざまな誘因などを避けても日常生活に支障をきたす頭痛が頻回にみられる場合や、痛みの程度が強く毎日のように続く頭痛のために、登校できない思春期の子どももいます。この場合、年少から片頭痛を経験している子が、思春期に入って強いストレスにさらされると頭痛が慢性化することがあります。このような場合、鎮痛薬を使用する回数が増えてしまいます。しかし、鎮痛薬を飲みすぎてかえって頭痛が悪化することがあります。具体的には、単一成分の鎮痛薬を月に15日以上、または市販薬に多い複合鎮痛薬を月に10日以上、3ヵ月を超えて使い続けている場合です。このような薬物乱用を避けるためにも、またトリプタン製剤が使用できない場合は、痛みを起こしにくくする予防薬を検討します。

月に1回の頻度で片頭痛があるというだけで、予防治療薬を使用する必要はありません。予防治療薬には数種類の薬剤が使用されています。

風邪薬あるいは抗アレルギー薬として古くから知られているシプロヘプタジン(商品名:ペリアクチン)抗てんかん薬として使用されるバルプロ酸、抗うつ薬として使用されるアミトリプチリン、カルシウム拮抗薬であるロメリジンなどが挙げられます。

シプロヘプタジンはセロトニン受容体拮抗作用により片頭痛発作に関わるセロトニンという物質の働きを調整する作用も期待できるとされ、片頭痛予防薬として使われることもあります。いずれの薬剤も、最低1ヵ月は続けて内服し、効果判定をおこないます。頭痛の回数、程度が減れば、それだけ鎮痛薬を使用する回数も減るため、予防治療薬の役割は大きいと考えられます。


頭痛は片頭痛か緊張型頭痛によって冷やすかあたためるか異なります。片頭痛では頭を冷やすことで症状が和らぐことがあります。片頭痛はあたためると、痛みが悪化してしまうので、頭痛時に入浴することはやめましょう。

反対に、緊張型頭痛ではあたためることで症状がよくなることが多いですが、冷やすことで悪化することもあるので注意が必要です。緊張型頭痛の場合、体を動かすことで痛みが緩和され、痛み止めを使用しなくてもよくなることが多いようです。そのため、子どもの緊張型頭痛では、体育の授業を受けることも可能です。また緊張型頭痛は肩こりなどを伴うことが多く、長時間同じ姿勢をしないなど日常生活について指導します。そうすることで改善し、薬物療法が必要になることはほとんどありません。可能であれば運動や入浴をさせることで頭痛をやわらげ、痛み止めに頼る回数を減らしましょう。

片頭痛や緊張型頭痛の対処をしても頭痛が治らない場合には二次性頭痛やその他の頭痛であることが考えられます。


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