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  • fureaikanpou

体温と睡眠の関係、深部体温の測定方法とその意義(不眠症:その6)

〔体温と睡眠の関係〕

赤ちゃんがスヤスヤと眠る前、手足がぽかぽかと暖かくなることを知っている人は多いと思います。一方、手足が冷たい冷え性の人はしばしば寝つきが悪くて悩んでいます。また更年期障害などで顔や体が火照ってなかなか寝付かれない人もいます。このように体温は、睡眠と深い関係をもっています。

体温には2種類あり、1つは、カラダの表面温度である皮膚温で、ワキや口の中の温度を測るとその状態が分かります。もう1つは、脳を含めた内臓の深部体温で、生命維持のために皮膚温より1度ぐらい高くなっているのが特徴です。

赤ちゃんが眠くなる時に手足が暖かくなるのは、体の内部の深部体温を下げる為に熱を放熱しているからといわれています。自律神経の働きで、末梢血管が拡張して血流を巡らすことで放熱し、深部体温を下げています。手足から外界に熱が逃げていくことで体の内部の温度が下がっていきます。


わたしたちの体温は常に一定ではなく、朝起きてから夕方まで上昇し、その後は下降に転じます。起床時は頭がボーっとしていて、体の動きも鈍いのですが、時間が経つにつれて生命活動をコントロールする自律神経の働きで、体温や血圧、臓器の活動力も上がって、仕事や家事の活動が向上します。しかし、1日中活動を続けていると、心身に疲労やストレスが蓄積していくので、就寝時間が近づくにつれて体温を下げ、睡眠中に全身をクールダウンする準備に入ります。

この深部体温を低下させるために皮膚の表面から熱を放出し、脳や内臓の温度を下げて代謝を下げて休むようにして、疲れやストレスを解消するように働いています。一般的に、体温がピークに達するのは午後4時前後、そして睡眠の始まりとともに低下し一番低くなるのは午前4時ごろで、この変動は1℃ぐらいあるといわれています。しかし年齢を重ねるにつれて体温変動は小さくなります。

このような体温の変化が毎日きちんと発生していれば、寝つきが良くなって深い眠りを得やすくなります。しかし不規則な生活や一日中エアコンの下で生活する人は体温変動のリズムが乱れがちになり布団に入ってもなかなか寝付けなくなります。朝から晩まで体温が低いままであるとか、夜になっても体温が下がらない状態にあったら、その原因を探って本来のリズムを取り戻す必要があります。


このような体温の規則性は概日リズム(サーガーディアンリズム)と呼ばれていて、地球の自転周期より10分間ほど少し長くなっているため、毎日少しずつズレが生じます。そこで必要になるのが、光の刺激による“概日リズムのリセット”です。

朝起きて太陽光を浴びるとこのズレが修正されるので、体温の変動も正常になるほか、夜になって眠りに誘う睡眠ホルモンのメラトニンの分泌リズムも整い、質の高い睡眠が得られるようになります。このようなすぐれた体内リズムがはたらいている一方で、体温変化を妨げる行動が日常化していると、睡眠の質は低下しやすくなります。カラダを温めているつもりの習慣も、逆効果になっていることも多いですから、下記に挙げるポイントを日常習慣と照らし合わせてみてください。

該当する項目があったら、できることからすぐに改善していきましょう。

  1. 朝からダラダラ過ごす 睡眠中は体温が低下しているので、目が覚めたら体温の上昇を促すために、たとえ体がだるくても頑張って起きましょう。

  2. 日光浴をしない 朝起きてすぐ日光浴することは、概日リズムのズレをリセットするだけでなく、交感神経の活性化させるためにも必要です。自律神経は体温調整機能もコントロールしているので、太陽光をしっかり全身に浴びて、脳に目覚めの合図を送りましょう。

  3. 朝起きた時、冷たい水を飲む 起きてすぐ水を飲むのは、睡眠中の発汗で減ったカラダの水分補給のために重要ですが、冷たい水を飲むのは内臓を一気に冷やし、体温が上がりにくくなります。体温より少し高く温めた白湯かコーヒー、紅茶を飲みましょう。

  4. 朝食を食べない 体温を上げるには、エネルギー源が必要ですので、朝食を摂ってしっかりカロリー補給することが大切です。日光浴を兼ねて早朝散歩か軽いウォーキングをすると交感神経の働きが活発になり、食欲も出るようになります。

  5. 昼間、エアコンの効いた部屋に長時間滞在する 冷房が効いた部屋に長時間いると、体温調節機能が乱れてカラダがどんどん冷えていきます。冷房がきついオフィスにいる時は、上着やひざ掛けを使って、温度調整をしましょう。

  6. 寒暖差を気にかけない 私たちの自律神経は、5~7度以上の外気温変化が発生すると対応力を失い、次第に機能が低下します。特に冬は外出先から帰宅して暖房で温まった室内に入ると、カラダは温まるものの、寒暖差の影響で自律神経はストレス反応を引き起こし、交感神経が興奮状態になり、冷え性がさらに悪化します。寒い季節の外出は、外気温に合った上着を着用し、手袋やマフラーを使うようにしましょう。

  7. カフェイン飲料の過剰摂取 温かいコーヒーや緑茶は、心身をリラックスさせるだけでなく、脳を覚醒させて行動力を高めてくれます。しかし、摂取量が多くなるとカフェインの影響で利尿作用が高まり、トイレに行く回数が多くなります。その結果、尿と一緒にカラダの熱が体外に放出されて、体温低下につながります。平熱が低い、朝と夕方の体温変化が小さいという方は、昼過ぎからはなるべくノンカフェイン飲料を飲むようにしましょう。

  8. 夕食に汗が出る食材を食べる 唐辛子やショウガなどは、カラダを温める作用がありますが、逆に汗によって発生する気化熱で体温が奪われてしまい、冷え性につながる可能性があります。汗が出たら、すぐにタオルで拭き取るようにしましょう。1日を通して体温が低い状態にあったり、常に手足が冷えたりしている人は、皮膚からの熱放散が進みにくく、深部体温が下がらず、寝付きが悪くなります。

  9. 夕食後にカラダを動かさない 夕食後、軽くストレッチをしましょう。背伸びをしながら両手を天井にのばして、その後、全身の力を抜いてダラダラする。このストレッチを5回ぐらいするだけでも、副交感神経が優位になりやすくなって、寝付きがよくなり深い睡眠につながります。また夕方の運動も、皮膚からの熱放散を増やすので、うまく眠るのに効果的です。体温が下がり始めて、睡眠の準備に入る夜は、手足が冷えないように配慮すると同時に、心身をリラックさせて副交感神経優位にしましょう。

  10. 寝る直前の入浴 寝る直前の入浴は皮膚温だけでなく深部体温も上がってしまいますから、寝つきが悪くなって睡眠の質が低下します。体温が下がる時間は1~2時間くらいかかるので、就寝の90分ほど前の入浴がオススメです。40度ぐらいの少しぬるめのお湯に15分ほど浸かると、疲労回復とストレス解消が進み、睡眠に入るまでに上昇した深部体温が急降下します。この急激な体温変化で、寝つきが良くなることが期待できます。また、寝る前のぬるめの足湯や手湯を使って体表面を軽く暖めても、眠りに入るまでの時間が短かくなり、深い眠りを得やすくなります。軽く温めた体は、末梢血管が拡張し、手足の表面からの熱放散が増え、体の内部の温度が低下しやすくなるためスムーズな入眠に繋がります。しかし、しっかり体を温めてしまうと、深部体温が上昇してしまい、入眠が妨害されてしまうので注意して下さい。

最後に、朝までグッスリ眠るためにも、室温は26度前後(冬は16~19度)、湿度は50%前後に保つようにしてください。寝苦しい熱帯夜は、エアコンの温度を26度ぐらいに設定にして、朝までつけっぱなしにしたほうが寝やすいと思います。“あんか”などの保温グッズを使う場合は、眠りについてから30分後に電源が切れるようにタイマーをセットして下さい。また電気毛布が必要な人は、タイマーで加熱を切るか、最弱レベルに切り替わるようにすると、眠りが深くなります。部屋の暖房も寝てから少し室内の温度を低くすると、深い眠りが得やすくなります。

〔深部体温の測定方法とその意義〕

体温とは、文字どおり、体の温度のことを意味します。人の体は、場所によって温度が違います。手足の末梢や体の表面の温度は表在体温あるいは皮膚温と呼ばれ、筋肉や皮膚の熱の産生量が比較的少ないうえ、熱の放散が簡単に行われています。そのため、中心から離れるほど、比較的低い温度を示し、季節や環境の影響を受けやすいため安定していません 。

一方、深部体温と呼ばれている体の内部の温度は、脳や心臓などの大切な臓器の働きを保つために安定しています。このような深部体温は脳や心臓のほかに、肝臓、腎臓、消化器などの臓器の温度と動脈血の温度が含まれ、これらは常に働いているため、代謝が盛んであり、熱の産生量も多いため、深部体温に最も近い直腸の温度はわきの温度より1℃近く高いといわれています。特に肝臓は高く、38℃またはそれ以上あり、熱の産生量の高い脳の温度も38℃近いといわれています。

このように体温は特に深部体温が大切です。しかし体の内部なので簡単には測ることはできません。体温は一般には、わき、口中(舌下)、耳(耳内)、直腸などで測られています。測定を行う部位による温度は、直腸>口腔>腋窩になります。平均的な体温は深部体温である直腸が37.2℃、口腔が36.8℃、腋窩が36.4℃といわれています。

日本では習慣として「わき」で測ることがよく行われていますが、わきで体温を測定するのが主流となっている国は世界中で数ヵ国しかありません。欧米では一般的には口腔内、あるいは直腸で測定しています。直腸温は、多少不快な感じを与えるという点があり、日本では新生児や手術時など以外は、一般的にはあまり用いられていません。そこで患者に何の苦痛も与えず、しかも簡単に測定できる腋窩温あるいは口腔温がよく用いられています。ワキの温度は、そのままでは「体の表面の温度」ですが、ワキをしっかり閉じることで温まり、体の内部の温度が反映されます。十分に温まったときの温度を平衡温といい、これを測るのが正しい検温です。平衡温に達するには、ワキを閉じてから10分以上かかります。この10分間は、十分にワキが温まるのに必要な時間です。

体温は水銀体温計で測定するのが一番正確といわれています。水銀体温計は温まると膨張する水銀の特性と、上昇した水銀糸をそのまま留めておく構造を利用し、安定した最高温度を測定できます。しかし水銀体温計はガラスでできているために、割れて水銀やガラスが飛散する危険があるという欠点があります。この欠点を解消したのが電子体温計で、その先端のセンサーで温度を感知し、体温を測定します。

電子体温計には、実測式と予測式があります。

実測式は、水銀体温計と同様に、変化している温度がそのまま表示されます。10分以内の検温では実際より低く測定されしかもバラツキも大きく、短時間の検温では誤差が大きいことが分かっているため、水銀体温計でも実測式電子体温計でも、10分以上の検温が必要です。予測式は、測り始めてから90秒間の体温上昇カーブから10分後の値(平衡温)を予測して表示する方法です。

テルモの予測式+実測式体温計は、1,000例あまりの体温測定データを記憶したマイクロコンピューターを内蔵しています。このマイコンが、体温の上昇を細かく分析・演算し、平均90秒(予測検温)で平衡温を予測します。さらに予測成立の電子音が鳴っても、そのまま測り続けると、自動的に実測式体温計に切り替わり、実測式で測定した体温の値を表示します。

90秒で予測した値と、10分間、実測した値との誤差は、0.01度±0.13度(平均値±標準偏差)と、高い予測精度が得られたと報告されています。このように1分半で測れる予測式電子体温計はとても便利ですが、以下に述べるような方法でしっかり挿入して固定しておかないと、水銀体温計より高めにでたり低めにでたり、また測る度に値が異なるなどの事態が生じます。

『ワキでの正しい検温方法』

中心体温に近い脇の下の動脈(脇窩動脈)のそばの体温を測定する必要があります。

そのため、

  1. ワキのくぼみの中央に斜め下から体温計の先端をあてます。

  2. 体温計が体軸に対して30度くらいになるように角度を調節して、深く差し込んで、計測している腕の手の平を上向きにしてしっかり閉じます。体温計の先端を脇の中央の奥に押し上げるようにして、その位置をキープすることがポイントです。真下・真横・斜め上から差し込んでも正確には測れません。

  3. 平衡温になるまで、水銀体温計や実測式体温計は10分以上、予測式なら電子音がなるまでじっとしています。

途中で体温計を取り出したら、最初からやり直しです。予測式では、すぐにくり返し検温する場合は、少し時間をあけてください。

『測る前の注意』

飲食や入浴、運動などの後、および外からの入室後30分間は検温に適しませんので避けてください。測る前には、必ずワキの汗はしっかりふき取りましょう(特に子どもは汗っかきなので注意して下さい)

『体温を測定する意義』

体温を知るということは、体調を知ることにもつながり、健康管理のために大切です。体温を保つと体の機能が正常に働き、病気にかかりにくくなります。一方、体温が低い状態が続くと基礎代謝が低下し、内臓などの機能も衰えるため、体調も悪くなります。

人は、朝・昼・夜と、24時間単位に体温が変化する体温リズム(概日リズム)があります。1日のうちで早朝が最も低く、次第に上がり、夕方に最も高くなります。体温には、年齢による差があります。

子どもはやや高く、高齢者はやや低めです。さらに、体温は、熱が出る病気にかかっていなくても、運動、時間、気温、食事、睡眠、女性の性周期、感情などにより変動しています。

その平熱の範囲を知ること、時間を決めて平熱を把握することが、体調管理に大きく役立ちます。日本人の体温の平均値は、36.89度±0.34度(ワキ下検温、とされており、36.6~37.2度の間に入る人が、全体の7割を占めます。つまり、平熱が37度くらいの人もそれなりにいるということです。一方、高齢者の体温は約0.2度ほど低く、36.66度±0.42度とされています。また、一般的に1日の体温リズム(概日リズム)による変化は、通常1度以内におさまります。測定部位、測定法によって、得られる温度は異なるため、平熱は常に、同じ測定部位、測定法によって測る必要があります。

このように、体温には個人差があり、一概に何度以上が発熱と決めることはできません。それぞれの人が、元気なときの平熱と体温リズムによる変化の幅(日によって、または時間によっての差)を予め確認しておき、それ以上の温度上昇をもって、発熱と考えるべきでしょう。平常時の体温より0.5~0.7度の温度上昇をもって、発熱と判断するとする意見もあります。ちなみに感染症法では、37.5度以上を発熱、38.0度以上を高熱と分類しています。

平熱の測定は、体調の良いときに、1日だけでなく、日をあけて何日間か測ってみるとよいでしょう。起床後・昼食前・夕方・寝る前の4回計測し、時間帯ごとの平熱を把握することが理想です。平熱がどのくらいか知っておきましょう。元気なときに、1日4回(朝、昼、夕方、寝る前)食事前の安静な状態で体温を測ってみてください。食後やお風呂、運動のあとには体温が上がります。最低30分以上経ってから検温しましょう。体温はわきで平均36.78℃だといわれます。

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