• 院長 田中康文

ノンレム睡眠とレム睡眠(不眠症:その4)

ヒトは睡眠中に目を閉じ、横になって寝ている姿は外見からは同じような状態に見えますが、実はノンレム睡眠とレム睡眠という2つの異なる睡眠状態を交互に繰り返しています。ノンレム睡眠は主に脳を休める眠りであり、レム睡眠は身体を休める眠りとされています。眠りにつくと、はじめに浅いノンレム睡眠があらわれ、時間とともに眠りが段々と深くなり、深い睡眠状態がしばらく続きます。その後、再び浅いノンレム睡眠状態になり、レム睡眠へと移ります。

このようなノンレム睡眠とレム睡眠の一連のサイクルは睡眠周期と呼ばれ、90~120分の周期で一晩に4~5回繰り返されます。この中で、最も深く眠っているのが1周期目のノンレム睡眠で、この最初の90分が黄金の90分と呼ばれています。

最初の深い眠りで脳下垂体から成長ホルモンが分泌され、身長を伸ばしたり、疲労回復や全身の細胞の修復が行われていると言われています。このようなノンレム睡眠は人間では睡眠全体の8割を占め、ノンレム睡眠が多く見られますが、下等動物では反対にレム睡眠が多いと言われています。それは、人間は活動時間が長く、大脳皮質が機能するためには、大量のエネルギーを必要とし、機能を維持するためにはその分休息が必要になり、深いノンレム睡眠の時間が長くなったと考えられています。それなら深い睡眠が集中する前半だけ寝ておけばいいのでは…という疑問が起こりますが、睡眠の後半のレム睡眠時に記憶を整理したり定着させたりしています。このようにノンレム睡眠、レム睡眠それぞれに役割があるので詳しく以下で説明したいと思います。

〔ノンレム睡眠の特徴〕

レム期は睡眠中に左右に眼球が動く急速眼球運動(Rapid Eye Movement)が見られるのが特徴です。この休息眼球運動の英語の頭文字をとってREM(レム)睡眠と呼ばれています。一方、急速眼球運動が見られない睡眠はノンレム睡眠と呼ばれています。

その特徴としては、

1.入眠期の浅い睡眠段階ではゆっくりと揺れるような眼球運動がみられますが、その後、睡眠が深くなると眼球の動きは停止します。

2.脳波は活動が低下し、周波数が遅くなります。

3.しかし身体の筋肉の緊張は保たれます。

4.脈拍、血圧、呼吸が安定しています。

5.この時期に眠っている人をおこすと、目覚めが悪く、夢を見ていることは少ない。

このノンレム睡眠中の脳の活動を脳波で観察すると3段階に分けられ、ステージにより眠りの深さが変化していきます。

1.小さな音で目覚めてしまう浅い眠り

2.軽い寝息を立てる程度の浅い眠り

3.声や物音がなっても目覚めない深い眠り

1~3につれて眠りは深くなり、脳波を見ると、ゆっくり大きな波形(徐波)が観察されます。

このようなノンレム睡眠は大脳の睡眠とも呼ばれ、大脳が休息するため、脳波はゆっくりとした波になるのが特徴です。また身体を活発に活動させる時に働く交感神経などを休ませ、副交感神経が優位になり、心拍数や体温、代謝などが低下します。

またぐっすりと眠っている深いノンレム睡眠に移行すると、脳は休息状態になっていますが、全身の筋肉の緊張は保たれています。そのため、寝返りをうつなどをして疲労が溜まっている部位の回復をしています。この活動により、脳と身体がリフレッシュされ、日常生活で得た疲労を回復しています。その回復具合により、朝目覚めたときに熟睡感や満足感を得ることできます。

さらに睡眠初期の深いノンレム睡眠時に、成長ホルモンが分泌されているといわれています。成長ホルモンは身長を伸ばすなど、骨格形成や成長に関わっていますが、子供だけでなく、大人も分泌されています。年齢が高齢になるにつれて分泌量は減りますが、高齢でも分泌され、細胞の修復や脂肪分解などの代謝調節、免疫力の向上など生命機能を維持するために重要な役割を担っています。

このようにノンレム睡眠の大きな役割に脳の休息状態と成長ホルモンを分泌させる機能があります。特に睡眠の最初の90分で深い眠りに入ることが大切で、睡眠全体の質を向上させるためには重要です。

これができれば、しっかり成長ホルモンの分泌が行われ、子供は育ち、大人は衰えにくい身体を維持できるといわれています。

〔レム睡眠の特徴〕

レム睡眠の特徴としては、

1.急速眼球運動が現れる。

2.脳波が入眠期から軽睡眠期に似たパターンを示す。

3.身体の姿勢を保つ筋肉(抗重力筋、姿勢筋)の緊張がほとんどなくなります。

などがみられ、そのほかには

4.感覚刺激を与えても目覚めにくくなります。

5.レム睡眠には脈拍、呼吸、血圧など自律神経機能が不規則に変化し、この時期は自律神経系の嵐とも呼ばれています。

6.この時期に眠りについている人を起こすと80%以上の人が夢を見ているなどがあげられます。

眠りに入ってから45-60分以内にノンレム睡眠の深い眠り達し、やがて約1時間から2時間ほどで徐々に浅い眠りになり、レム睡眠に入ります。以後はノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、90-120分の周期で繰り返されます。ノンレム睡眠の深い眠りは睡眠の前半に集中して出現するのが特徴で、起床時刻に近づくにつれ、レム睡眠の時間が長くなり、覚醒の準備をしていきます。このようなレム睡眠に入ると、まず、筋肉の動きが低下します。次に、左右に眼球が動く急速眼球運動が見られます。

また昼間に多く学習した日は、夜にレム睡眠が増加することなどから、レム期は記憶の整理や定着などに重要な働きをしていると考えられています。

レム睡眠時には脳の強い活動の反映として夢をよく見ることが知られています。このような夢は、記憶の再生と再処理過程で現れる脳内イメージ現象であるとも言われています。これまで自分が体験した出来事や、蓄積してきた記憶や情報がランダムに抽出されて、映像イメージなどに反映されたものが夢になるといわれています。そのため、時に夢は荒唐無稽なものであったり、恐怖心に駆られるものであったりします。

ノンレム睡眠の時にもわずかながら夢を見ますが、ノンレム睡眠時の夢はなんとなく夢を見たような感覚が残っていますが、どんな夢だったかはっきり覚えていないことが多いようです。それに対して、レム睡眠時の夢は、わりとはっきり思い出せるものが多く、ストーリー展開があり、目が覚めた時に他人に説明しやすい内容となっています。

このようにレム期は外見的には寝ていますが、脳は活発に働いています。しかし外部からの刺激を遮断する機能が働いているために、物音など、外部からの刺激で目が覚めやすいということはありません。また、レム睡眠中は脳は覚醒に近い状態で活発に活動しているにもかかわらず、筋肉の緊張が抑制されており、体が動きません。そのため、レム睡眠は身体の睡眠ともよばれています。それは大脳皮質が活動している時は脊髄のレベルで筋肉への情報伝達を遮断しておかないと、身体が寝ながらにして激しく動いてしまうことになります。このようなときに何らかの要因で覚醒状態になると脳は起きているのに身体は動かない状態(いわゆる金縛り状態)になることがあります。

また、レム睡眠中は自律神経のコントロールがしづらく、呼吸や心拍数が変動しやすい状態になっています。そうした身体の変化が、上に人が乗っているような圧迫感や息苦しさを感じることがあります。このような金縛りは、精神的・肉体的なストレスを抱えていたり、不規則な生活をして身体のリズムが崩れ、自律神経が乱れていると、入眠時レム睡眠と呼ばれる現象が起こることがあります。通常はノンレム睡眠から入眠しますが、レム睡眠から入眠すると、眠りに入った時に脳が覚醒に近い状態なので、金縛りが起こりやすい状態になっています。

このように脳や身体の疲れをとるには、深い睡眠状態に入る前半の睡眠を安定させることが重要です。ノンレム睡眠の深い睡眠は睡眠の前半に集中しており、最初の3時間が一晩の深い眠りのうちの80~90%を占めているといわれています。しかし記憶を整理し、学習するためには、後半も眠っていることが必要です。

そのため、睡眠時間が3~4時間程度では、十分な睡眠といえません。脳と身体を休め、機能をしっかりと回復するには、成人では1日7時間程度の睡眠は必要といわれています。

〔ふたつの眠りがある理由〕

レム睡眠時に脳が完全に休んでおらず筋肉の緊張を抑制するメカニズムが働いているというシステムは、人間や哺乳動物にとって、身体も脳も休んでしまう無防備な時間を短くするという利点があったのではないかといわれています。

〔レム睡眠・ノンレム睡眠と加齢〕

年をとるにしたがって、一晩の眠りにおけるレム睡眠とノンレム睡眠の深い眠り(徐波睡眠といいます)の占める割合が変わってきます。35歳を過ぎるころから、だんだんと徐波睡眠の時間が減っていきます。

一方で、レム睡眠の占める割合は年齢が上がっても、約20%前後と大きな変化はありません。加齢によって増えるのは、入眠後の中途覚醒です。夜中に途中で目覚めたと記憶に残るものから、記憶に残らない数十秒程度の短いものまでを含めて、中途覚醒といいます。

20歳では約10分、35歳では約20分と比較的短いですが、50歳では約30分、60歳では約40分、70歳では約60分と中途覚醒の時間が次第に長くなることが知られています。年齢を重ねるごとに、レム睡眠・ノンレム睡眠のサイクルが不安定になっていき、ぐっすり眠れたと感じる熟眠感を低下させます。

若い頃はもっと眠れたのに、と以前と同じように眠れないことに不安を覚える人もいますが、年齢とともに睡眠も変わっていくもの。その時の自分に合った眠り方を探していくことが大切です。

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