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  • 院長 田中康文

耳鳴り


耳鳴りとは、外界に音がないのに耳内に音が聞こえることで、キーンという金属音のような高い音からブーンという低音、セミが鳴くような音まで、様々な音が聞こえます。このような耳鳴りは中耳炎などでもみられますが、その多くは原因が分からず、西洋医学的には治療が難しい病気とされています。

漢方においても難しいことには変わりはありませんが、身体の不調が原因となって現れることもあり、体質を見直し、体を整えることで耳鳴りが軽くなることもあります。

原因にはストレスや水分代謝異常、疲労、胃腸の疲れ、老化などがあります。

1.ストレス

過度のストレスにより、強い高音の耳鳴りが断続的に聞こえたり、症状に波があったり、またしばしば頭痛や不安感を伴います。

また、突発性難聴や自律神経失調症に伴う耳鳴りや聴力の減退などもこのタイプにあたります。

竜胆瀉肝湯のほかに、抑肝散加陳皮半夏、柴胡加竜骨牡蛎湯、四逆散、加味逍遥散、釣藤散などを用います。黄連解毒湯により高音の耳鳴りが低音化して気にさわらなくなるという報告もあり、頓服で用いることもあります。

2.痰湿(たんしつ)

水分代謝が悪くなり、体内に余分な水分(痰湿という)が溜まり、粘りのある痰湿が停滞し、耳がつまりことで起こります。更年期に多く、脂質異常症や肥満、むくみがみられやすく、耳鳴りのほか聴力の減退、耳の閉塞感、めまい、胃のむかつき、胃のつかえ感などが見られます。また、症状が長期にわたると粘りのある痰湿で血流も悪くなってしまうため、同時に血流の改善を心がけると効果的です。

竹茹温胆湯、半夏白朮天麻湯、苓桂朮甘湯などを用います。

低音部の難聴・耳鳴はこれらの利尿剤あるいは五苓散で軽くなるという報告もあります。血流の改善として、当帰芍薬散や桂枝茯苓丸などを用います。

水巡りの邪魔をする冷えに注意します。冷たい物の摂りすぎや不規則な食生活など胃腸の負担になることは避け、適度な運動で余分な水分が溜まらないようにしましょう。

3.疲労、体力不足

慢性的な疲労や病後などで体力が落ちているときは、胃腸の働きも弱くなります。栄養分を体中に運ぶ機能が低下すると、耳の栄養状態も悪くなり、耳鳴りや聴力が低下します。疲労時に耳鳴りや聴力の減退が強くなり、立ちくらみ、倦怠感、食欲不振、軟便などの症状が見られます。

補中益気湯のほかに七物降下湯、黄耆建中湯などを用います。

4.老化

夜間の耳鳴り、聴力低下、記憶力の低下などが見られます。主に老化が原因となりますが、程度の差はあれ、これは誰にでも起きることです。あまり気にせず、リラックスしていつまでもイキイキと過ごすことが大切です。

生命力を蓄えている「腎」を養う六味地黄丸や牛車腎気丸などを用います。

入浴や散歩は血行を促進するため、耳の症状への対応はもちろん、身体の健康維持にもつながります。

耳マッサージ:親指と人差し指で耳をはさみ、全体をマッサージします。

耳には腎をはじめとするさまざまなツボがあるほか、マッサージによるリラックス効果も期待できるので、気軽に試してみてください。また、イヤホンなどをできるだけ使わず、耳の負担を少なくすること、心地よい音を聞いて耳をリラックスさせることも大切です。


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