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院長 田中康文

月経痛・月経困難症


月経痛の中でも日常生活に支障をきたすような激しい月経痛は月経困難症と呼ばれます。

このような月経痛は月経時あるいは月経の1〜3日ぐらい前から起こり、腰痛や頭痛、吐き気を伴うこともあります。

また、月経前にイライラしたり憂鬱になったり、あるいは胸が張ったりする月経前緊張症(月経前症候群)を伴うこともよくあります。

そして、月経時に血塊やレバー状の血が排出されることもよく見られます。

月経痛に対して、鎮痛剤で痛みを抑えたり、ピルで月経をコントロールしたりすることは、あくまでも表面的な治療です。月経は精神状態や体調がしばしば反映されますので、月経異常をきたす原因を探り、その原因を漢方薬にて根本的に治していった方がよいと思われます。

 

それでは月経前緊張症や月経痛、血塊などが なぜ生ずるのかを中医学(中国医学)的に説明したいと思います。

月経が生ずるためには「血」が子宮に注ぎ込まれなければなりません。しかし、「血」自体は動かないので、それを誘導したり、運ぶものが必要です。それが中医学で言う「気」という存在です。

しかし、気と言われてもピンと来ない人がいると思います。

分かりやすく説明すると、電気や水蒸気の気です。

気そのものは見えませんが、電気の場合、電灯やヒーターなどを通して、水蒸気の場合は水の存在により、物体を通して気という存在を実感できます。

吐く息を冷たい窓ガラスに吹きかけた時、水滴が落ちることから分かるように、気は少し水分を含んだ暖かい存在です。このような気が私達の体の中に縦横無尽に走っているのです。

このような血と気は「肝」という臓腑と深い関係があります。

中医学的には血は肝で貯蔵され、肝はまた気をスムーズに巡らせる作用(疏泄作用と呼ばれます)や感情、特に怒りなどの感情と深い関係があるといわれています。

このような血と気は相互に関係し合い、血は気に潤いと栄養を与え、気は血を運びます。

従って、血が足りない時は気の流れが悪くなり、気の流れが悪くなると、血の流れも悪くなります。

月経が生ずるためには、まず気が子宮に向かって流れ、次いで肝で貯蔵されている血が気によって子宮に注ぎ込まれて月経が起こります。

この気の流れがスムーズでない時は月経前にイライラしたり、うつ状態になったり、あるいは胸が張ったりします。そして血の流れが悪くなった時に月経痛や経血に血塊やレバー状の血が排出されます。

月経は川の流れににています。川は何も障害物がなければゆったりと流れますが、その水が少なくなったり、岩などがあれば、流れは悪くなり、泥などが貯まりやすくなります。この泥は血塊やレバー状の血と似ています。

中医学的に月経痛の原因を探り、血を補ったり、気の流れをスムーズにしたり、血塊やレバー状のものがあれば取り除いたり、冷えがあれば暖めて、血や気の流れをスムーズにして月経痛を軽くさせます。

月経痛や月経前のイライラやうつ状態で悩まれている人は是非漢方薬を試して頂きたいと思います。

(2018年4月)


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