• 院長 田中康文

中医学(中国伝統医学)と頭痛(東洋医学からみた頭痛(その2)


頭は体の最上部にあり、頭部には臓腑の陽気(清陽の気といいます)、手足の気など、体全体の陽気が集まってくるため、頭は「清陽の府」または「諸陽の会」といわれています。そのため、頭痛の部位と臓腑にはある程度の関連性があるといわれており、経絡(気の流れの道筋)の循行により、部位によって使用する薬物が異なるといわれています。

  1. 頸項部(後頸部から両側肩甲骨間の背部)から後頭部は太陽頭痛(太陽膀胱經)

  2. こめかみから側頭部は少陽頭痛(少陽胆經)

  3. 前額から眉稜部は陽明頭痛(陽明胃經)

  4. 頭頂部は厥陰頭痛(厥陰肝經)と呼ばれています。

1.急性の頭痛

急性の頭痛の多くは外感頭痛です。

【外感頭痛】

外感頭痛とは風邪やインフルエンザウイルスなど、外部からの侵入(外邪という)によって発症する頭痛です。このような外邪はほとんど風に伴われて体内に侵入し、寒邪が侵入した場合は風寒頭痛、熱邪が侵入した場合は風熱頭痛、湿邪が侵入した場合は風湿頭痛といいます。いわゆる「かぜひき」の頭痛や感染症の頭痛に相当し、寒け、発熱などの感冒症状を伴っています。

①風寒頭痛

寒は凝縮して滞る性質があるので、気血のめぐりを渋滞させ詰まりが生じ、痛みが起こります。外邪が体表の大部分を占める太陽の経を犯すことが多いので、太陽頭痛を呈するのが一般的です。寒冷の時期の感冒に相当します。強いしめつけられるような頭痛で、項背部(後頸部から両側肩甲骨間の背部)のこわばりを伴うことが多く、強い寒け、軽度の発熱などが見られます。

治療としては、からだを温め発散することにより汗を出させて邪を外部に追い出すようにします。麻黄湯・桂枝湯・葛根湯+センキュウ茶調散がよく用いられます。


②風熱頭痛

熱は上昇する性質があるため、熱感を伴った頭痛が起こります。脹ったような頭痛とともに軽度の寒けと高い熱、咽痛、口渇、咳、黄色い痰などが見られます。インフルエンザや炎症性疾患の初期に相当します。

治療としては、体表を開いて熱を放散し邪を外部に追い出すようにします。清上防風湯、荊芥連翹湯などが用いられます。


③風湿頭痛

湿は粘りやすい性質で、湿が頭を包み込むと、頭が重く締めつけられたような痛みが感じられます。寒邪を伴う場合もあります(風寒湿)。重く包まれてしめつけられるような頭痛で、寒けや発熱は強くなく、頭重感、身体がだるく重い、食欲不振、軟便などが見られます。湿度の高い季節や環境での感冒に相当します。寒邪をともなう場合には、痛み、寒けが強くなります。

治療としては、体表を開き邪を発散するとともに湿気を吸収し、めぐらせて除くようにします。九味檳榔湯、五苓散などが用いられます。急性に発症する頭痛には、このような外感頭痛のほかに、ストレスなどにより急に発症する肝火頭痛があります。


【肝火頭痛】

精神的ストレスや怒りなどで、情緒機能を有する肝が化熱し、肝火となって頭部に上炎するために起こる頭痛です。怒り・悩みにひきつづいて激しい頭痛が生じ、割れるような拍動性の痛みが持続し、いらいら、怒りっぽい、目の充血、顔面紅潮、口が苦いなどが見られます。怒ってカッカした時に、目を見開いて目が真っ赤になったり、頭から湯気が出るのは肝火が上炎した結果です。

肝だけでなく胆の化熱することが多いため、厥陰頭痛と少陽頭痛が合併して現れます。

精神的な過度の興奮が生じた状態に相当します。治療の時期を失ったり、治療が適切でない場合には、火熱が陰血を損傷し、肝陽頭痛(後述)へと移行します。

治療としては、興奮をしずめ熱を冷ますことにより肝胆実火を解消させるようにします。竜胆瀉肝湯、釣藤散などが用いられます。

2.反復性・慢性の頭痛

反復したり慢性に持続する頭痛は内因が主体であり、外因は頭痛を誘発したり増悪させる要素として作用します。

【頭風頭痛】

最もよくみられる頭痛で、長期にわたって反復する頑固な頭痛で、頭痛以外にこれといっった特徴は特にありません。

自然界の風は突然現れ、舞い上がり、突然消えるという特徴がありますが、このような風が

体内にも生じて(内風といいます)、頭部を襲い頭痛が発生する病態で、古人は風が吹くと頭痛が生じると考えて「頭風」と称しました。

普段からストレス、疲労、睡眠不足などで慢性的に肝腎の陰血が不足する傾向があり、そのため陰陽のバランスが崩れて肝の陽氣(肝陽といいます)が上昇しやすくなっており、このような状態に、さらに軽微な感冒を患って外から風邪が侵入したり、あるいは情緒変動、疲労、温度変化、睡眠不足などのなんらかの軽微な外因の作用により、内風をひき動かすたびに、肝陽と結びついて風陽となって頭部を襲い、おりにふれて反復する頑固な頭痛が起こります。肝胆に関連した病変ですから、一般には厥陰頭痛・少陽頭痛として発症します。

治療としては、内風を鎮めるとともに肝気の流れを調整して止痛するようにします。センキュウ茶調散+釣藤散がよく用いられます。


【内傷頭痛】

内傷頭痛とは、体内の臓腑の機能失調によって現れる頭痛です。

一般に、外感頭痛は激しく急性で経過が短く、内傷頭痛は反復性・慢性で経過も長く、詳しく症状を分析して臓腑の機能、陰陽のバランスを調整しなければならないといえます。

臓腑のうち、最も関連の深いものは肝です。

①肝陽頭痛

慢性病などの消耗により肝腎の陰血が少なくなり、陰血と陽氣のバランスが崩れ、陽気を抑制できなくなり、肝の陽氣(肝陽といいます)が上部に上がって(上亢といいます)、頭痛を引き起こします。肝胆に関連した病変ですから厥陰頭痛・少陽頭痛をともないます。慢性に反復し時間とともに増減する頭痛がみられ、そのほかにはふらつき、耳鳴り、いらいら、怒りっぽいなどの上部の症状とともに、腰がだるく痛む、下肢に力が入らないなどの下部の虚弱症状がみられます。中年以降によくみられる頭痛で、高血圧症・更年期障害・自律神経失調症などに相当します。

治療としては、肝腎の陰血を滋潤することにより肝陽を抑制し陽亢を鎮潜させて正常化を図ります。釣藤散などが用いられます。


②気虚頭痛

頭風頭痛とともに最もよくみられる頭痛です。生まれつき体が弱い人や疲労や慢性病、老化により陽氣(エネルギー)が不足して頭部に上昇できずに頭部にエネルギーを与えることができないために生ずる頭痛です。慢性的に反復する頭痛、疲れると痛みが増強、疲労倦怠感、息切れ、食欲不振などの症状が見られます。

治療としては、元気をつけ、気力を増強させ、陽気が頭部に上昇できるようにします。

補中益気湯などが用いられます。


③血虚頭痛

出血・出産・慢性病などにより血が不足し、脳に潤いと栄養分を与えることができないために生ずる頭痛です。胃腸機能が弱く、気虚のために血を作ることができなかったり、出血の時に血とともに気も失うので、多くは血虚に気虚をともなって気血両虚を呈します。慢性的な頭痛に頭のふらつきをともない、顔色や肌につやがない・動悸・不眠・筋肉のひきつり・目のかすみ・しびれなどが見られます。

治療としては、血を作り増やすことで、脳に栄養分を与えます。四物湯、当帰芍薬散、婦宝当帰膠などが用いられます。気虚をともなう場合は、気を増やす目的にて十全大補湯・人参養栄湯などが用いられます。


④風痰頭痛

反復する発作性の頭痛とめまい、甚だしいと周囲が回転して立っていることができず、吐きけ、嘔吐を伴い、ふだんから食欲不振、吐きけ、痰がからむなどの症状が見られます。飲食の不摂生、飲酒、過労、精神的ストレスなどにより、胃腸機能が弱まり、水湿が停滞して痰を生じ、一方では陰血の産生が不足して肝の陰血が不足し、肝陽を抑制できないので肝風が発生し、内生の痰が肝風とともに風痰となって頭部に上昇し、頭痛が生じ、根本に胃脹機能の低下が存在します。

治療としては、肝風を鎮め、痰を除き、胃脹機能を高め、痰と風の内生を防止します。半夏白朮天麻湯、釣藤散、竹茹温胆湯などが用いられます。


⑤瘀血(オケツ)頭痛

瘀血とは血の流れが悪くなり滞った状態を指します。固定性の刺すような頭痛で、夜間や運動時に増強します。他の病態で頭痛が反復することにより血の流れが悪くなったり、外傷、打撲、むちうち、手術などによる内出血で、血行が停滞して頭痛が生ずる病態です。他の病態に対する治療と併用すべきです。

治療としては、血行を促進するとともに老廃物を除いて循環を順調にします。通導散、桂枝茯苓丸、冠元顆粒、血府逐瘀湯などが用いられます。

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